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雇用保険加入条件・役員の場合は?兼務役員雇用実態証明書の書き方

会社などで労働者として勤務していると、社会保険や雇用保険に加入することになります。

経営者や役員であったとしても、報酬を得ている限りは、社会保険には加入する義務があります。

しかし、役員の場合には、雇用保険に関しては、原則、加入することができません。

そうすると、役員の場合であっても、会社を辞めることになる場合があるので、その際に、雇用保険の失業給付の受給などのメリットを受けることができなくなってしまいますよね。

特に、最初から役員として会社を立ち上げた場合ではなく、途中から役員に就任した場合などは、これまでは、雇用保険に加入できていたので、不安な気持ちになってしまうかもしれません。

そうすると、せっかく、キャリアを積んで、役員への昇格の声掛けがあったところで、喜んで受けることにためらいを感じてしまう人もいるのではないでしょうか。

取締役などの役員は、どのよう条件の場合にも、雇用保険には加入することはできないのでしょうか。

そこで、ここでは、取締役などの役員が、雇用保険に加入できる条件はあるのかについて見ていきたいと思います。

取締役など会社役員は雇用保険に加入できない?

取締役などの会社役員が雇用保険に加入できるかを確認する前に、まずは、雇用保険の加入条件について見ていきたいと思います。

雇用保険の加入条件は?

雇用保険の加入は、以下の条件を満たした労働者が対象となります。

  • 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者
  • 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること
  • 学生ではないこと

会社役員であっても、労働条件として、上記を満たすことは、全く問題ないでしょう。

しかし、取締役などの会社役員は「労働者」とは見なされないため、原則として、雇用保険に加入することができません。

しかし、取締役などの会社役員であったとしても、ある一定の基準を満たせば、雇用保険に加入することが可能になる場合があります。

それは、役員の種類によって判断されます。

役員の種類を判断する基準は、兼務役員に該当するどうかということになります。

兼務役員の基準については、以下となります。

兼務役員に該当する場合

兼務役員に該当する場合とは以下のような場合です。

  • 本部長、部長
  • 次長、課長、係長
  • 支店長、工場長

上記のように、役員のうち部長、課長、その他法人の使用人としての職制上の地位を有し、かつ、常時、労働者としての職務に従事する者を兼務役員といいます。

また、中小企業などにおいては、そもそも職制上の地位が定められていない場合も少なくありません。

その場合には、役員として常時従事している職務が、他の労働者の職務の内容と同様の労働性を有しているのであれば、兼務役員として扱うことができます。

兼務役員に該当しない場合

以下のような場合には、兼務役員には該当しません。

  • 代表取締役、代表執行役、代表理事及び清算人
  • 副社長、専務、常務その他これらに準ずる職制上の地位を有する役員
  • 合名会社、合資会社及び合同会社の業務執行社員
  • 取締役(委員会設置会社の取締役に限る)、会計参与及び監査役並びに監事

上記のような役員の場合には、職制上の地位を有しているとして、兼務役員には該当しません。

ただし、専務取締役営業本部長などのように、単なる通称として専務、常務と呼称されている場合には、兼務役員に該当するとされています。

兼務役員に該当するかどうかの判断基準とは?

兼務役員に該当するかどうかが、雇用保険に加入できるかどうかの一つの判断基準となります。

しかし、兼務役員かどうかというのは、役職名などから判断するのでしょうか。

そうであれば、会社側だけでの判断になってしまいますよね。

兼務役員であるかどうかというのは、他の労働者と同様の労働性が認められるかどうか、というのが判断基準となります。

しかし、兼務役員に、他の労働者と同様の労働性が認められるかどうかというのも、会社の判断だけでは決められないことですよね。

何か客観的な判断基準などはあるのでしょうか。

兼務役員に労働性が認められれば雇用保険に加入できる?

上記で見てきたように、兼務役員である場合には、他の労働者と同様の労働性があることが認められれば、雇用保険に加入することが可能となります。

それでは、兼務役員に労働性があることを判断する基準とは、何なのでしょうか。

兼務役員の労働性を判断する基準とは?

まず、他の労働者と同様の労働性があることを判断する基準として、下記の基準を満たしていることが前提となります。

  • 労働者としての賃金が役員報酬の5割以上であること
  • 労働者としての勤務実態が確認できること
逆に言えば、上記の基準を満たしており、役員という立場よりも労働者としての労働性が強く認められる場合には、雇用保険に加入することができます。
そして、この労働性を証明するためには、兼務役員雇用実態証明書という書類を提出する必要があります。

兼務役員雇用実態証明書の書き方・記入例

上記の基準を満たした上で、労働者としての「労働性」を有していることを証明するために、兼務役員雇用実態証明書という書類を提出する必要があります。

書き方については、他の雇用保険関係の書類と大差はありません。

注意すべき個所について書き方と記入例を見ていきたいと思います。

役員名称

取締役など、役員としての名称を記入することになります。

現職名称

総務部長など、従業員としての名称を記入します。

役員としての担当業務内容

経営管理など、役員として会社の業務にどのように携わっているのかを記入します。

従業員としての労務内容

経理・総務などといったように、従業員としての業務を具体的に記入します。

役員報酬・従業員賃金

労働者としての賃金が役員報酬の5割以上になっている必要があります。

兼務役員雇用実態証明書の添付書類は?

また、兼務役員雇用実態証明書の他に、下記の書類も一緒に添付する必要があります。

  • 法人登記簿謄本(氏名が記載されたもの)
  • 賃金台帳(最低でも就任前1ヶ月および就任後1ヶ月分は必要)
  • 出勤簿
  • 人事組織図
  • 定款
  • 議事録等(役員登用時のもの)

上記の書類を踏まえて、勤務実態を総合的に判断し、他の労働者と同様の労働性があると認められた場合には、雇用保険に加入することが可能となります。

提出するタイミングは決まっている訳ではありませんが、上記の基準を満たしている段階での役員就任が決定した場合には、速やかに提出するようにしましょう。

取締役が雇用保険に加入する際の注意点は?

取締役の場合においても、他の労働者と同様の労働性があり、兼務役員として認められる場合には、上記の手順を踏むことで、雇用保険に加入することが可能になります。

しかし、取締役が雇用保険に加入する手続きを行う際には、いくつか注意点があります。

  • 労働時間の管理が行われているか(出勤簿やタイムカードがあるか)
  • 労働者としての賃金が役員報酬より多くなっているか
  • 賃金台帳と決算処理とで相違がないか

上記の事項を満たしていない場合には、労働性が強いと判断されず、雇用保険の手続きに必要となる兼務役員雇用実態証明書を発行できない可能性が高くなります。

取締役に就任した人の中には、労働者としての身分を有しているのにも関わらず、上記が不十分であるために雇用保険に加入できなくなるのは非常にもったいないですよね。

役員でも雇用保険に加入できる場合には加入手続きを!

このように、役員に就任した場合でも、条件を満たし、他の労働者同様に労働制が認められれば、兼務役員となり、雇用保険に加入することが可能となる場合があります。

揃えないといけない書類は多いですが、ハローワークでの承認自体はそこまで複雑ではありません。

該当する役員がいる場合には、上記の内容を参考に、役員になっても、雇用保険に加入するメリットを活用してみてください。

また、役員本人だけでなく、役員家族・親族についても雇用保険に加入することが可能な場合があります。