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ところで、上記の算式は民間非営利活動に対する企業セクターの経済的貢献を推計しようとしたものであるが、もっと広い社会的視点に立って、それでは企業のほかに個人はどの程度寄付しているのか、行政からの補助金や委託金はどの程度の割合を占めているかも興味をそそられる研究テーマである。この領域を研究した「Global Civil Society-Dimensions of the Nonprofit Sector」(The Johns Hopkins Comparative Nonprofit Sector Project〈注2〉)が私たちに手がかりを与えてくれる。
それによると、一九九五年のわが国の日本の民間非営利組織の支出(収入)は、二一四O億ドル(二O兆一一六O億円、一ドル=九四円、年間平均レート)である(注3)。この民間非営利活動はどのような収入源によって賄われ、またその収入源の構成比はどうかというと、上の図のように示される。
企業・個人からの寄付の割合は二・六%と、ほかの収入源と比べ格段に小さい。しかし、ほかの先進国(オーストラリア、フィンランド、米国、スペイン、アイルランド、ベルギー、ドイツ、オランダ、フランス、オーストリア、英国)の中でこの割合が一O%を超えているのは米国とスペインだけである(上記一一カ国+日本の平均は七・五%)。わが国は最も低いが、他国と比べて極端に低いわけではない。ほとんどの国で収入源の主要な部分を占めているのは、料金・政府部円であり、フイランソロピー(民聞からの寄付)はマイナーな存在でしかないというのが、この調査の一つの重要なメッセージである。米国もその例外ではない。

大体、わが国では全部門の中で、医療と福祉サービスが雇用べlスで民間非営利セクター全体のほぼ七割弱を占めているという現実に目を留めるなら、フイランソロビーの役割がことさら小さく写るのは避けられないことである。
しかし、もう少し踏み込んで分野別の割合を見てみると必ずしもフイランソロビーがマイナーな存在ではないことがわかる。
分野別では、収入の中で個人および企業からの寄付の割合が非営利セクターの収入の二O%を超えている領域が三つある。助成財団およびボランティア活動推進組織さ二・三%)、国際貢献(一工ハ・七%)、環境問題全コ了六%)であり、これらの分野は、政府からの援助よりも個人・企業寄付の方が大きいかほとんど政府からの援助と措抗している(表2参照)。こうした分野は、六0年代以降市民活動とボランティア活動が高まるに伴って生成発展したものであり、個人・企業の寄付がこのような分野で貢献度のプレゼンスを高めているのである。
分野別の収入の構成比を見て気づくのは、医療分野では、政府補助が八六・九%を占めていることである。我が国の医療は基本的に医療保険制度に基づいて実施されており、その財源は国・地方自治体、個人、企業の三者が保険料を負担しあって社会保険として運営されている。医療機関は、一般の医療法人であれ医療法人以外の医療業(国立・公立・日赤・済生会・社会保険関係団体・公益法人・学校法人など)であれ提供したサービスの対価の支払いはこの保険システムから受け、それをメーンの収入として事業を行う。これ自体が財政上は自己完結したシステムを持っており、
社会貢献の入り込む余地はほとんどない(ちなみに表2の中で、医療に対するフイランソロビーの貢献はたったの0・八%である)。
私見を述べれば、医療については、一般の医療法人およびその他の医療業も含めて、民間非営利活動の収入源を調べる場合には、その対象から外すべきであろう。そうした前提にたって、内閣府の民間非営利活動団体の支出(九五年)に対する企業寄付の割合を計算してみると、ほぽ四%と推計される。
残念ながら、このNPO国際比較研究では、フイランソロピー(個人と企業寄付)の民間非営利活動に占める割合が極めて小さく、研究者たちがさらに突っ込んだ分析をする関心を失ったためか企業と個人の寄付の内訳すら示されていない。

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