資本金とは?会社設立にいくら必要か、手続きや基本情報を解説
会社の設立に資本金は必要不可欠です。資本金はどれくらいあればいいのか、最低限の金額で済ませられるのかと悩む方も多いかもしれません。
またこれから始まっていく事務的な手続きを面倒に感じ、正確に早く済ませてしまいたいと感じる方もいるのではないでしょうか。
この記事では資本金とはそもそも何かといった基本的なところから、いくら必要なのか、またその手続きや予備知識を分かりやすく解説します。
目次
資本金とは会社設立時に用意した元手となる資金
資本金とは会社を運営していくにあたり、そのスタート時に用意した元手となる資金の事です。資本金はこれから会社を設立し事業を行っていく上でとても重要な要素のひとつです。
なぜなら資本金の額が大きければ大きいほど「この会社は資金に余裕があり安定している」とみられ、銀行や取引先からの信用を得られるためです。
例えば、同じ内容の事業を展開する資本金が多いA社と少ないB社では、取引先からの見え方が異なり、 資本金が多く財務的に余力があると思われるA社の方が信頼を得られ取引をしやすくなる可能性があります。
また、金融機関は資本金の大きさを見て融資を行うか否かや融資の額を決定します。
融資の限度額にも影響し、 資本金の多い会社には銀行も高い評価をします。そのため、必要な時に十分な融資を受けられる可能性が高くなります。したがって資本金は 、長期的な視点で見ても非常に重要であると言えます。
資本金の最低額は特に決まっていない
資本金の最低額は特に定められていません。
2006年の会社法の改正により、最低資本金の規制は撤廃されました。そのため、1円からでも会社を設立することができます。ただ、会社設立時の元手として取引先などの第三者に見られるため、そのまま会社の信用として判断されることがある点においては注意です。
会社設立時の資本金の平均はだいたい300万円前後(令和3年経済センサス・活動調査)となっていますが、以下のポイントを参考に決めると良いでしょう。
資本金を決める上で押さえておきたい4つのポイント
資本金を決める上で押さえておきたいポイントを4つご紹介します。1章でもお伝えしたように、資本金の金額は会社の信用や資金繰りに影響を与えるため、自分の会社に合った資本金額を慎重に決める必要があります。
節税の観点から1000万円以下に抑える
まず、節税の観点から1000万円未満とするかどうかが、資本金額を設定する上での目安になります。
資本金が1000万円未満であれば2年間は消費税が免除される制度が適用されます。逆に資本金が1000万円を超えると、免税措置が受けられなくなり、消費税の課税が一年目から発生します。
例えば資本金を1100万円に設定した場合、会社運営開始後から消費税を課されることになり業績もまだ不安定な中支払いをしなくてはならず、負担になります。しかし、資本金を900万円に設定すれば初年度から2期目まで免税措置を受けられ、その分を会社の運転資金に充てることもできます。
また、法人住民税に関しても節税効果があります。法人住民税とは、企業の利益に対して増減する「法人税割」と、利益には関係なく資本金や従業員数に応じて課される「均等割」があります。
地域によって異なるものの、資本金が1000万円以下であった場合は、1000万円以上の場合に比べて均等割の金額が抑えられ節税効果が大きくなります。これらの免税措置を最大限に活用するため資本金を1000万円以下に設定する事も検討しつつ、他の資金計画の要素なども参考にして決められるといいでしょう。
取引先からの社会的信用を考慮して決める
取引先から社会的信用が得られそうかという観点も、資本金額を決定する際のポイントとなります。1章でもお伝えしましたが、資本金は単なるスタートアップの資金ではなく、会社の信用を表す重要な指標ともなります。資本金が多いと「経営が安定している」「支払い能力がある」と見られ、会社によっては 取引をするか否かの選定材料となることもあります。
例えば同じ事業をしている2つの会社があり、一つは資本金100万円、もう一つは資本金800万円の会社であったとすると前者は後者と比較して、取引先から「財力に不安がある」という印象を与えてしまう可能性もあります。したがって、資本金を決める際に取引先からの目線を考慮して資本金の金額を決めるというこということが求められます。
許認可の基準に基づいて決める
資本金を決める際に、許認可の基準を考慮すべき場合があります。許認可とは特定の事業を行うために必要な手続きの事です。
一部の業種では、その事業をするために最低限必要な資本金が決められています。これを満たしていないと、事業活動を合法的にすることができません。
具体例として以下のような金額があります。
許認可の基準を十分に確認し、それを踏まえたうえで資本金の設定をすることが重要です。
初期の運転資金を考慮し決める
事業立ち上げ時の初期投資と事業が軌道に乗るまでの運転資金を計算しておくことも、資本金額を決定する上でのポイントのひとつです。なぜなら事業始めたばかりのころは、売り上げが伸び悩む可能性があるからです。
会社設立初期は、売り上げが安定しない中、建物の賃料や人件費、広告費、設備投資など様々な初期費用が掛かります。
これらを十分にカバーできる運転資金がなければ経営が不安定になり、事業計画通りの運転が難しくなる可能性があります。
また、初期の運転資金に余裕があれば売り上げが安定するまでの間を乗り切りやすくなります。したがって、会社設立時には初期の運転資金をしっかりと見積り、それに基づいて資本金を設定することが重要です。
資本金の払い込み方法5つのステップ
資本金の払い込み方法5つのステップをご紹介します。資本金を決めた後はいよいよ払い込みです。
以下のステップを踏めば、正確に払い込みを行うことができます。
step1.発起人名義の口座と通帳を用意
まずは、発起人名義の口座と通帳を用意しましょう。
会社の設立前は会社名義の銀行口座を開設できないため、発起人の口座と通帳を使用します。
また、新しい口座を作らずに、普段利用しているものでも使用できます。
発起人が複数の場合は代表の口座を使用します。
step2.資本金を振り込む
資本金を発起人代表の口座に振り込みます。
発起人が複数の場合はまとめて口座へ払い込むか、それぞれが払い込みをします。
step3.通帳をコピーする
通帳の表紙の表裏両面と振込内容が書かれたページをコピーします。
ネットバンクの場合、【銀行名・支店名・口座名義人・口座番号・振込内容】が書かれたページをコピーします。
コピーのサイズは決まっていませんが、後に作成する払い込み証明書と合わせるためA4サイズが望ましいです。
step4.払い込み証明書を作る
払い込み証明書とは会社設立時に資本金が正しく振り込まれたことを証明するためのものです。作成はパソコンでも手書きでもかまいませんが、以下の内容が必須です。
【払い込んだ金額・払い込んだ株数・1株の払込金額・振込日・本店所在地・会社名・発起人(全員)の署名】
これを基に法務局での会社設立手続きに進みます。
step5.通帳コピーと払い込み証明書を一つにする
表紙の証明書部分と、4-3で作成したコピー(通帳の表表紙・裏表紙・振込内容の記載があるもの)をホチキスで左端2か所をとめて冊子状にします。
この書類は会社設立登記(会社を正式に設立するために法務局に会社の情報を登録すること)を行う際に法務局に提出するものです。
資本金の払い込みが完了し、書類が不備なくそろっていれば、会社設立の手続きを進めていくことができます。
資本金の払い込み時期は原則として定款認証日以降
資本金の払い込み日は特に決められてはいませんが、会社の定款の認証が完了した後に行うのが一般的です。
定款の認証とは会社設立の際に発起人が作成した会社のルールや基本方針を定めた書類である「定款」を公証人*に内容が正しいか公式にに内容が正しいか公式に証明してもらう手続きのことです。
資本金の払い込みは定款の認証前に行っても法律上問題はありませんが、実務上は定款認証日以降に払い込みを行うことが推奨されます。
理由としては、法務局でこの後登記の申請をする際に、定款を認証した後の入金だと「会社のためのお金である」ということが分かりやすく、スムースに手続きが進むためです。
それゆえ、資本金の払い込みは会社の定款認証完了後が望ましいでしょう。
*公証人…公証役場に勤務する法律の専門家
資本金に関してのよくあるQ&A
資本金に関してのよくあるQ&Aをまとめました。
Q1.手元に現金がない場合どうすればいい?
A.現物出資という方法を活用することもできます。
現金がない場合、現金以外の資産を資本金にする「現物出資」という方法があります。
手元に現金がなくても、不動産や車などを資本金として会社に提供することができます。ただ、現物出資は適正な価格評価が必要で、一定の金額を超える時は専門家による査定や登記手続きが必要になります。
Q2.資本金を増やしたり減らしたりできるの?
A.資本金は増やすことも減らすこともできます。
手続きを行えば、資本金の増減は可能で、資本金を増やすことを「増資」減らすことを「減資」といいます。
以下にそれぞれのメリット・デメリットをまとめました。
メリット | デメリット | |
増資 |
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減資 |
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これらのメリットデメリットを踏まえたうえで慎重に資本金の増減は考えてみるとよいでしょう。
Q3.資本金は引き出しできるの?
A.基本的には引き出すことができます。
会社設立時の費用や、当面の運転資金など経費支払いのために使うなら問題なく引き出すことができます。
資本金は銀行口座に一度預けられるものの、会社の初期費用や運転資金に使われることを前提としているためです。
ただし、プライベートとして使った場合は会社から個人への貸し付けとなり、返済の義務が生じます。
また、会社のお金が貸し付けに使われてしまうと銀行などからの信用に悪影響を及ぼす可能性もあり、注意が必要です。
まとめ
資本金は会社の設立の際に運転資金や対外的信用の指標となる大切なものです。
資本金の額を決めるには節税や取引先からの信用、許認可の基準、初期の運転資金を考慮し適切な金額を決めましょう。
資本金についてしっかりと計画し、会社の安定したスタートを切れるようにしましょう。