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基金拠出型法人と経過措置型法人の違いは?

 

基金拠出型法人と経過措置型法人の違いは?

基金拠出型法人とは平成19年4月1日の新医療法施行後に通常設立される医療法人の形態をいい、持分の定めがありません。一方、従来の法人とは、平成19年3月31日以前に設立された、持分の定めのある形態の医療法人をいいます。

1)社団医療法人

基金拠出型法人経過措置型法人
出資持分なしあり
定款の記載方法
・社員資格喪失時
(定めなし)【出資額限度法人】
社員資格を喪失した者は、その出資額を限度として払戻しを請求することができる。
【持分あり医療法人】
社員資格を喪失した者は、その出資額に応じて払戻しを請求することができる。
・残余財産処分本社団が解散した場合の残余財産は、次の者から選定して帰属させるものとする。
(1)国
(2)地方公共団体
(3)公的医療機関の開設者
(4) 都道府県医師会又は郡市区医師会
(5) 財団医療法人又は出資持分なしの社団医療法人
【出資額限度法人】
本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額を限度として分配するものとし、当該払込済出資額を控除してなお残余があるときは、社員総会の議決により、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て処分するものとする。
【持分あり医療法人】
本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする。

2)財団医療法人

基金拠出型法人経過措置型法人
寄付行為の記載方法・残余財産処分本財団が解散した場合の残余財産は、次の者から選定して帰属させるものとする。
(1)国
(2)地方公共団体
(3)公的医療機関の開設者
(4) 都道府県医師会
又は郡市区医師会
(5) 財団医療法人又は出資持分なしの社団医療法人
本財団が解散した場合の残余財産は、理事会及び評議員会の議決を経、かつ、○○県知事(厚生労働大臣)の認可を得て処分するものとする。

*財団医療法人については、経過措置型法人から基金拠出型法人への移行に伴う法人税、所得税及び贈与税等の課税は生じない。

 

今後の基金拠出型医療法人のポイントは?

a.基金の拠出者は拠出額よりも多い額の返還を受けることができません。
b.基金を返還するときに利息を付すことは出来ません。
c.金銭以外の財産の拠出については、拠出時の価額に相当する金銭で返還します。
d.基金の返還は、貸借対照表上の純資産額から基金総額や資本剰余金等を差し引いた金額を限度としています。
e.解散時に払い込み拠出額を超える残余財産の帰肩先は、国等に限定されています。


基金拠出型医療法人とは、「基金」の制度を採用した医療法人です。
ここで「基金」とは、医療法人の財産として拠出されるものであり、法人を運営していくための原資となるものをいいます。具体的には、金銭の他、土地や建物、診療設備等の医療法人を設立するために拠出したものです。このような基金制度は「剰余金の分配を目的としない性格を維持しながら、活動の原資となる資金を調達し、財産的基礎の維持を図るための制度」といわれています。
平成19年4月1日以降に設立される医療法人社団については、すべて出資持分の定めはなく、解散時の残余財産のうち払込拠出額を超える部分については搬出者に帰属しないということになりました。これは医療の非営利性を高めるという厚生労働省の指導によるものといえるでしょう。
注意しなければいけないのは、今までは医療法人の残余財産の帰属先に制限はなかったので出資者個人を帰属先にして結果的に法人の含み益も含んだ部分が個人の持分になっていましたが、今後は残余財産から出資持分に応じた額の払戻しを受けることは出来なくなったということです。つまり、医療法人を設立したときの拠出額部分しか搬出者には返還されないということです。さらにこの拠出金は債権のように利息のつくものではなく、金銭で拠出した場合についても、金銭以外の財産で拠出した場合についても、その当時の価額で返還される事になります。基金を返還するときにも注意が必要です。
まず、定時社員総会の決議が必要になり、当初の基金に相当する金額を「代替基金」として計上し、返還しても基金の総額が目減りしないようにしなければなりません。
簡単にいうと、当初の純資産(基金部分のみ)が100あった場合には、基金返還時に代替基金として追加で100計上し、純資産が最低でも200なければ返還をすることはできないということです。このあたりの計算については会計士・税理士等の専門家に確認する方が確実です)尚、この代替基金については基金が返還されても基金の総額が減少しないように設けられた制度であるので任意に取り崩す事も出来ないことになっています。
残余財産の帰属先が制限されたことについては、解散時に都還府県知事の認可を受けて、国若しくは地方公共団体、特定・特別医療法人又は持分のない一般医療法人に帰属するものとされました。ただし、定款・寄付行為に残余財産の帰属先の規定がない場合は国庫に帰属されてしまいます。今後は開業当初から、解散時の残余財産の帰属先をどこにするのか検討する必要があるといえそうです。

 

基金拠出の返還時期はいつになりますか?

拠出金の返還時期は、設立総会や定款などで定めた年数を経過した後になります。しかし当初定めた年数を経過しても純資産額についての要件を満たしていない場合返還することはできません。
基金の返還は、当初定めた返還時期経過後に開催される定時社員総会の決議によって行わなければなりません。また、貸借対照表の純資産額が次の金額の合計額を超える場合、その会計年度の次の会計年度の決算の決定に開する定時社員総会の日の前日までの間に限り、その超過額を返還の総額の限度として返還をすることができます。
 a.基金の総額
 b.資産につき時価を基準として評価を行っている場合において、その時価の総額がその取得価額を超えるときは、時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額 c.資本剰余金の価額

 なお、基金の返還に係る債権には、利息を付することはできません。


参考  設立総会議事録より抜粋

 第4号議案 拠出申込み及び設立時の財産目録承認の件議長は発言し、本法人設立の資産とするため、拠出を受けたい旨を述べたところ、設立者のうちから次のとおり拠出したい旨の申込みがあった。
 ○○○○ 預金 9,800千円
    合計 9,800千円
 議長は、前記の拠出の件について全員に発表したところ、一同これを確認し、承認した。拠出は基金拠出契約による。なお、○○○○は発言し、当該拠出金に間し、次のように述べた。
 拠出金は医療法人社団××××設立認可後10年間が経過した後に、拠出者に返還すること。医療法人が解散した場合には、他の債務の弁済後でなければ拠出金を返還することができないこと。
 拠出金は利子を付して返還しないこと。
 議長は発言し、この結果本法人設立時の純資産額は金9、800千円とし、その財産目録は別紙のようになると示したところ、一同これを承認し、本案は可決された。

定款より抜粋
第3章 基  金
策5条 本社団は、その財政的基盤の維持を図るため、基金を引き受ける者の募集をすることができる。
策6条 本社団は、基金の拠出者に対して、本社団と基金の拠出者との間の合意の定めるところに従い返還義務(金銭以外の財産については、拠出時の当該財産の価額に相当する金銭の返還義務)を負う。
第7条 基金の返還は、定時社員総会の決議によって行わなければならない。
2 本社団は、ある会計年度に係る貸借対照表上の純資産額が次に掲げる金額の合計額を超える場合においては、当該会計年度の次の会計年度の決算の決定に関する定時社員総会の日の前日までの問に限り、当該超過額を返還の総額の限度として基金の返還をすることができる。
 (1)基金(代替基金を合む。)
 (2)資本剰余金
 (3)資産につき時価を基準として評価を行ったことにより増加した貸借対照表上の純資産額
3 前項の規定に違反して本社団が基金の返還を行った場合には、当該返還を受けた者及び当該返還に関する職務を行った業務執行者は、本社団に対し、連帯して、返還された額を弁済する責任を負う。
4 前項の規定にかかわらず、業務執行者は、その職務を行うについて注意を怠らなかったことを証明したときは、同項の責任を負わない。
5 策3項の業務執行者の責任は、免除することができない。ただし、策2項の超過額を限度として当該責任を免除することについて総社員の同意がある場合は、この限りでない。
6 策2項の規定に違反して基金の返還がされた場合においては、本社団の債権者は、当該返還を受けた者に対し、当該返還の額を本社団に対して返還することを請求することができる。
策8条 基金の返還に係る債権には、利息を付することができない。
第9条 基金の返還をする場合には、返還をする基金に相当する金額を代替基金として計上しなければならない。
2 前項の代替基金は、取り崩すことができない。

 

基金拠出型法人の解散時の残余財産はどうなりますか?

医療法人は下記の事由が生じた場合に、解散となります。
   a.社員総会の決議
   b.社員の欠亡
   c.他の医療法人との合併
   d.破産手続き開始の決定
   e.設立認可の取消し
 旧来の医療法人の定款によると、「本社団が解散した場合の残余財産は、払込済出資額に応じて分配するものとする」という文言が入っている為、出資額に応じた財産の分配が認められていました。
 但し、残余財産の分配を認めてしまうと、利益が出た法人を意回的に解散させ利益を分配するということも起こりえるのを考慮し、医療法人の根本にある「非営利性」を基に国、地方公共団体又は他の医療法人等に残余財産を帰属させることにしたのです。そうしたことから今後医療法人では、後継者が決まっていない医療法人での高額な設備投資や資産の購入は計画性をもって検討することが必要となります。
 また、19年4月以前の医療法人は旧来の方式のままで良い事となっています。

 

基金拠出型法人の相続対策はありますか?

旧来の医療法人の相続で一番の問題となっていたのは、出資持分が取引相場のない株式として、時価により課税されていた点です。上場株式の様に換金性の高いものであれば問題ないのですが、出資持分の買い取りは運営上においても医師及び歯科医師である必要があるために非常に困難で、結果的には相続人がそのまま持分を取得する状態でした。
但し、今回の基金拠出型法人においては、あくまで出資ではなく拠出です。また当初の拠出した金額は定款の規約に基づき設立総会によりある一定の期間経過後には、返還することになっております。よって拠出金返還後の医療法人持分に問しての相続税対策としては必要ないと考えられます。ただ今後の税制動向について、常に注意が必要と思われます。

 

基金拠出型法人における税務上の変更点について

a.交際費等の損金不算入制度
資本金の額又は出資金の額が1億円以下の法人に係る交際費課税については定額控除限度額が年600万円です。基金拠出型医療法人は出資がない法人のため、別途定める方法により算定した金額を資本金等に準ずるものとして判定します。
{基末総資産簿価一期末総負債簿価-(当期利益または当期損失)}×60%
※当期、利益が計上されていれば金額を控除し、欠損が生じている場合はその金額を加算します。
b.寄付金の損金不算入制度
  事業年度の所得金額の2.5/100相当額となります。
c.消費税
  新設の基金拠出型医療法人は出資ではなく基金拠出となるので、設立2期は消費税の納税義務者とはなりません。
d.均等割(住民税)
  出資金額の無い法人のため、各税率表の最低金額が適用されます。
e.基金の相続税評価
今までの医療法人の出資持分の相続税評価は、一般法人の「取引相場のない株式」に準じて行われていました。つまり、相続税の財産評価基本通達により、a.類似業種比準価額方式b.純資産価額方式c.類似業種批准価額方式と純資産価額方式の折衷方式によって非上場株式と同じように評価します。(細かい評価方法については説明を省略します)ただし、この評価方法は通常の営利法人を対象にしており、財産を時価評価するということが前提になっているので資産の含み益にも課税することになっています。
今回の医療法改正により、基金拠出額は出資ではなく債権ですので、基金拠出した額以上には評価されないことになります。

 

設立認可書提出時に必要となる書類は?

設立当初財産目録・財産目録明細書
  リース物件一覧表
  債務リース契約書の写し
  債務リース引継承認書
  基金拠出契約書
  預金残高証明書
  社員及び役員の名簿
  開設しようとする診療所の概要
  診療所の平面図等
  不動産等を賃貸借する場合の賃貸借契約書の写し
  土地建物登記簿事項証明書
  設立総会議事録
  事業計画書及び予算書(最低2年分)
  設立者の履歴書
  印鑑登録証明書
  委任状
  役員就任承諾書
  実績表
  確定申告書
  理事長の医師免許証の写し
  管理者就任承諾書
  保健所の開設届(個人)の写し
※仮受付に必要な提出部数は1部です。
※本申請時の提出部数は2部(東京都保存用1部、認可書交付用1部)です。
※提出に必要な書類は、医療法人の規模、設立の内容により異なります。
 事業計画書及び予算書、委任状は、2年以上個人での開設実績があり、一定の要件を充たせば添付が不要となります。
※都道府県により理事長が基金を拠出するにあたり、特別代理人が必要となるケースがあります。管轄の医療整備課にて確認をしてください。