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Q11 取得費と取得日

 

Q11 取得費と取得日

私は、自宅を売却しようと考えていますが、敷地は平成18年1月に父親から相続で取得し、家屋は同年10月に自己資金で建てたものです。
 この場合、譲渡所得の計算上、取得費はどのようになるのでしょうか。また、敷地の所有期間を計算する場合、取得した日はいつになるのでしょうか。

敷地の取得費は、原則として、被相続人である父親がその敷地を取得した時の購入代金や取得に要した金額に、改良費や設備費を加えた合計額となります。また、家屋の取得費は、建築代金などの合計額から償却費相当額を差し引いた金額となります。
 なお、敷地の所有期間を計算する場合は、相続により取得した平成18年1月からではなく、被相続人である父親が敷地を取得した日から計算することになります。

【解説】
1、取得費の概要
 資産の取得費は、購入代金、建築代金、購入手数料、設備費、改良費などの費用のほか、取得費に含まれる主なものは、次のとおりです。ただし、事業所得や不動産所得などの必要経費に算入されたものは、資産の取得費に含まれません。
・土地や建物を購入(贈与、相続又は遺贈による取得も含みます)したときに納めた登録免許税(登記費用も含みます)、不動産取得税、特別土地保有税、印紙税
・借主がいる土地や建物を購入するときに、借主を立ち退かせるために支払った立退料
・土地の埋立てや土盛り、地ならしをするために支払った造成費用
・土地の測量費
・所有権などを確保するために要した訴訟費用(相続財産である土地を遺産分割するためにかかった訴訟費用等は除きます)
・当初から土地の利用が目的であったと認められる場合の建物の購入代金や取壊しの費用
・土地や建物を購入するために借り入れた資金の利子のうち、その土地や建物を実際に使用開始する日までの期間に対応する部分の利子
・既に締結されている土地などの購入契約を解除して、他の物件を取得することとした場合に支出する違約金
 なお、資産の取得費が分からないときや、実際の取得費が譲渡価額の5 %よりも少ないときは、収入金額の5 %を取得費とすることができます。

2、家屋の取得費
 自宅として使用していた家屋を売却する場合の取得費は、次のように計算します。

  建物の取得価額−償却費相当額= 建物の取得費

 なお、償却費相当額は、次のように計算します。

  建物の取得価額× 0 .9 ×償却率※×経過年数= 償却費相当額

※同種の減価償却資産の耐用年数×1 .5で償却率を決定します。

3、敷地の所有期間
 所有期間とは、土地や建物を取得した日から引き続き所有していた期間をいいます。この場合、相続や贈与により取得したものは、原則として、被相続人や贈与者が取得した日から計算することになります。

 

Q12 譲渡費用 譲渡費用について教えてください。

 私は古い貸家を所有しておりましたが、この土地を売って欲しいという人が現れましたので、その貸家を取り壊して売却することになりました。この取り壊しに約100万円かかりましたが、この費用は譲渡費用として控除することができますでしょうか。また譲渡費用の範囲についても教えてください。

 土地等の譲渡に際しその土地等の上にある建物等を取り壊 した場合は、その取り壊しがその譲渡のために行われたものであることが明らかであるときは、譲渡所得の金額の計算上、 譲渡費用として控除することができます。
 これは取り壊しにより、その土地等の価値の増加が見込ま れるためです。ただし、更地の方が売却に有利だからとあらかじめ建物を 取り壊していた場合には、任意の取り壊しということになり、 譲渡費用には該当しなくなります。「譲渡のために直接要した費用」であるかどうかがポイントとなるため、譲渡契約書に取り壊しを条件として記載するなど、その取り壊しが譲渡のために行われたものであることを明らかにしておくことが大切す。

【解説】
 譲渡所得は、土地や建物を売った金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算します。譲渡費用とは、土地や建物を売るために直接かかった費用のことをいい、建物の取り壊し費用のほか、建物の未償却残高相当額も含まれます。
 従って譲渡費用は、次のように計算されます。建物の取得費(未償却残)+ 取壊し、除却による支出費用―取壊し、除却により発生した廃材の処分価格
 また、譲渡費用の主なものは次のとおりです。
不動産を売却するために直接要した費用
①売買契約書の土地や建物を売るために支払った仲介手数料
②印紙税で売主が負担したもの
③売却のための広告料
④測量費
⑤売却交渉のための交通費及び宿泊費
⑥各種の調査費用(アスベスト調査、耐震診断、その他)不動産の譲渡価額を増加させるために支出した費用
①貸家を売るため、借家人に家屋を明け渡してもらうときに支払う立退料
②土地などを売るためにその上の建物を取り壊したときの取壊し費用とその建物の損失額
③有利な条件で譲渡するために契約を解除したときの違約金
 このように、譲渡費用とは売るために直接かかった費用をいいます。
 したがって、以下は譲渡費用となりません。
①固定資産税、都市計画税
②家財等の引越し費用
③抵当権抹消登記に要した費用
④相続の名義変更登記費用等
⑤売却代金の取立てに要する費用(弁護士費用等)
⑥譲渡所得の申告のために支払った税理士報酬

 

Q15 負担付贈与

 私は、15年前に銀行ローンで建築した賃貸アパート(時価2,000万円、帳簿価額1,000万円)を、息子に贈与しようと考えています。ただ、残債が1,400万円残っていますので、全額息子に負担させる予定です。
 この場合、贈与を受ける息子だけでなく、贈与をする私にも何か税金がかかるのでしょうか。また、私が賃借人から預かっている敷金100万円はどのようになるのでしょうか。

負担付贈与に該当しますので、あなたには譲渡所得に対する税金が、息子さんには贈与税がかかります。また、賃借人から預かっている敷金は、債務として息子さんに引き継がれます。


【解説】
 負担付贈与とは、受贈者に一定の債務を負担させることを条件にした財産の贈与をいいます。個人から負担付贈与を受けた場合は、贈与財産の価額から負担額を控除した価額に対して、贈与税が課税されます。 なお、贈与された財産が土地や家屋などの場合、贈与税の課税価格は、その贈与の時における通常の取引価額に相当する金額から負担額を控除した価額によります。
 また、資産の譲渡とは、有償無償を問わず、所有する資産を移転させる一切の行為をいいますので、通常の売買のほか、負担付贈与も資産の譲渡があったものとして課税されます。この場合、譲渡所得の収入金額は、受贈者が負担する債務の額となります。
 なお、賃貸中の建物の所有権の移転があった場合に、賃借人から預かっている敷金は、建物の旧所有者であるあなたから新所有者である息子さんに引き継がれますので、建物の贈与後は息子さんの債務となります。
 ご質問の場合、あなたの譲渡所得に対する税金と息子さんの贈与税は、次のように計算します。

贈与者(父):譲渡所得に対する税金
収入金額1 ,500万円(1 ,400万円+100万円)−取得費1 ,000万円=長期譲渡所得500万円
長期譲渡所得500万円×税率(15 %+5 %)=100万円
受贈者(息子):贈与税(暦年課税の場合)
(課税価格2 ,000万円−負担額1 ,500万円−基礎控除額110万円)×税率20 %−控除額25万円=53万円
(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。

本問の場合は

・贈与者(父)の税率が、(15% +0 .315% +5%)

となります。

 

Q16 代物弁済

 私は、友人から800万円を借りて事業を行っていましたが、このたび、全額返済するようせまられました。手持ち資金がありませんので、10年前に父親から相続した土地( 時価1,000万円、取得費は不明)を友人に渡し、借金を清算する予定です。
 この場合、私に何か税金がかかるのでしょうか。

代物弁済も資産の譲渡に含まれますので、あなたは消滅する債務の額を収入金額として、譲渡所得に対する税金がかかります。
 また、友人は代物弁済によって取得する土地の時価と消滅する債権の額との差額に対して、贈与税がかかります。


【解説】
 代物弁済とは、債務者が債権者の承諾を得て、金銭による弁済に代えて他の資産を引渡して、その債務を消滅させることをいいます。
 代物弁済も所有する資産を相手に移転させる行為ですので、資産の譲渡があったものとして、譲渡所得に対する税金がかかります。なお、譲渡所得の収入金額は、原則として、消滅する債務の額となります。
 ご質問の場合、あなたの譲渡所得の収入金額は、消滅する債務の額800万円になります。
 また、友人は、債権の額(800万円)を上回る土地(時価1 ,000万円)を取得することになりますので、取得する土地の価額と消滅する債権の額との差額200万円に対して、贈与税が課税されます。
 なお、上記差額について、友人があなたに清算金200万円を支払う場合は、贈与税は課税されません。この場合、あなたの譲渡所得の収入金額は、消滅する債務の額800万円と清算金200万円の合計額となります。

 あなたの譲渡所得に対する税金と友人の贈与税は、次のように計算します。
債務者(私):譲渡所得に対する税金
収入金額800万円−取得費40万円(800万円×5 %:概算取得費)   =長期譲渡所得760万円
長期譲渡所得760万円×税率(15 %+5 %)= 152万円
※清算金200万円を取得する場合
収入金額1 ,000万円(800万円+200万円)−取得費50万円(1 ,000万円×5 %:概算取得費)=長期譲渡所得950万円
長期譲渡所得950万円×税率(15 %+5 %) = 190万円
債権者(友人):贈与税
(課税価格1 ,000万円−消滅する債権の額800万円−基礎控除110万円)×税率10 % = 9万円
※清算金200万円を支払う場合
 代物弁済による経済的利益が発生しませんので、友人に贈与税は課税されません。
(注)平成25年1月1日から平成49年12月31日までの間は、復興財源確保法により、所得税に加えて、復興特別所得税がかかります。
本問の場合は
・債務者(私)の税率が、(15% +0 .315% +5%)
となります。

 

Q18 代償分割

 父に相続が発生しました。母は既に他界しており、相続人は私と妹です。父の財産は自宅の不動産(相続税評価額8,000万円)と保険金(3,000万円)です。妹との遺産分割において、自宅は父と同居していた私が相続することで合意しました。ただし、保険金の受取人も私であったため、妹は全く財産を相続できません。不動産を共有にしたくはないのですが、何かいい方法はありますか。

 代償分割という方法があります。代償分割とは遺産分割の方法のひとつで、相続人の1人又は数人が相続財産を取得し、その相続財産を取得した人が他の相続人に対して代償金などを支払う方法です。
 あなたの場合、自宅の不動産の全てと保険金を取得する見返りとして、妹に代償金を支払う方法が考えられます。


【解説】
1、不動産を共有で相続する場合
 遺産分割において、相続財産が不動産のみの場合は、その不動産を共有持分で相続することが考えられます。ただし、兄弟で不動産を共有した場合、売却等の処分に関しても共有者の同意が必要になり、また、将来財産が細分化されていく可能性があります。
 仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を共有で相続した場合、ご自宅の建替えや買換えをされるときは、全て妹の同意が必要となります。
2、小規模宅地等の特例
 相続税の計算上、小規模宅地等の特例の適用に関しては、その不動産の取得者ごとに判定をするため、要件を満たさない相続人がその不動産を相続しても適用が受けられないことが考えられます。また、同居している親族がご自宅を相続した場合、一定の要件を満たせば、240㎡まで80%の減額を受けることができます。
 仮に、あなたが妹とご自宅の不動産を1 /2ずつ共有で相続し、一定の要件を満たした場合、あなたが相続する持分のみが80 %減額の対象となり、妹が相続する持分については特例の適用がありません。
 具体的には以下の計算となります。
<1> 全てあなたが相続した場合の相続税評価額の計算
8 ,000万円×(1−80 %)=1 ,600万円
<2> あなたと妹が1 /2ずつ共有で相続した場合の相続税評価額の計算
あなたの持分:8 ,000万円×1 /2×(1−80 %)=800万円
妹の持分:8 ,000万円×1 /2 =4 ,000万円
合計:4 ,800万円
3、代償分割
 あなたがご自宅の不動産の全てを相続することで、将来の処分もご自身のみの判断で実行することができ、小規模宅地等の特例の適用を受けることが可能です。
 妹にはその見返りとして、保険金やご自身の現預金などから代償金を支払うことで円滑な遺産分割を進めることが可能です。
 留意点は以下の通りです。
<1> 代償分割を予定している場合には、生命保険金などで代償金に見合う財産を生前に準備しておきます。
<2>相続により取得した不動産を売却してその代金を分割した場合、換価分割と考えられ、売却に関する所得税等の負担が発生する可能性があります。
<3>代償財産として交付する財産が、その交付する相続人の所有不動産の場合には、その交付したときにおける時価でその不動産を売却したことになり、所得税等が課税されます。

 

Q19 離婚による財産分与

 この度、長年連れ添った妻と協議離婚をすることになりました。一緒に暮らしていた自宅マンション(時価3,000万円)を慰謝料として妻に手渡すことで、協議が成立しました。
 慰謝料として自宅を妻に渡す私、慰謝料として自宅を私からもらう妻に何か税金はかかるでしょうか?

 離婚による財産分与を土地建物などで行ったときは、分与した人に、分与した土地建物について譲渡所得税の課税が発生します。
 また離婚により財産をもらった場合は、通常、贈与税の課税は受けません。
 従って、マンションを渡す夫には譲渡所得税が課税されますが、マンションをもらう妻には贈与税は課税されません。

【解説】
1、離婚に基づく土地建物等による財産分与
 財産分与を現金で行った場合、課税は発生しません。しかし、土地建物のような不動産を財産分与すると、分与した人に譲渡所得税が発生します。
 ご質問の場合であれば、夫が妻に時価3 ,000万円のマンションを財産分与したので、夫がまずマンションを3 ,000万円で売却し、その売却代金の3 ,000万円を妻に渡すことにより、妻への財産分与義務を履行したと税務はみなします。マンションを直接妻への債務の弁済にあてたため、現金収入はなかったとしても、もし、譲渡所得の課税をしなかったら、資産を売却して現金で債務の弁済にあてた人とのバランスを欠くと考えているからです。
2、財産分与による譲渡所得税の計算
 土地建物を財産分与した場合には、分与したときの土地建物等の時価が譲渡収入金額となります。従って土地建物の分与を受けた人は、分与を受けた日に、分与を受けた時の時価で土地建物を取得したこととなります。
3、居住用財産の譲渡に係る課税の特例
 分与した財産が夫婦の居住用土地建物である場合、一定の要件を満たしているときは、居住用財産の譲渡に係る課税の特例の適用を受けることができます。
 居住用財産の譲渡所得の特別控除の特例及び軽減税率の特例は、譲渡した相手が、配偶者、直系血族及びその他特別の関係がある人のときは、適用できないことになっています。離婚に基づく土地建物等による財産分与も特殊関係者である配偶者に対しての譲渡として、特例の適用が受けられないと懸念されますが、「居住用財産の譲渡者から婚姻に伴う財産分与、損害賠償その他これらに類するものとして受ける金銭その他の財産によって生計を維持している者は、上記の特殊関係者に該当しないものとする。」とされているため、離婚による財産分与の譲渡は、特殊関係者への譲渡に該当しないこととされているからです。
 戸籍除籍前に譲渡をしたとしても、その後すぐに除籍をしている場合等、離婚による財産分与として認められるときは、適用を受けられると考えられています。
4、財産をもらった側の課税
 離婚により財産分与を受けた場合、通常、贈与税は課税されません。これは、離婚による財産分与の請求権を相手方に行使した結果取得したものであり、無償による財産の収受ではないと考えるからです。
 ただし、以下のような場合には、贈与税が課税されます。
(1) 分与された財産の額が婚姻中の夫婦の協力によって得た財産の額やその他すべての事情を考慮してもなお多過ぎる場合
 この場合は、その多過ぎる部分に贈与税がかかることになります。
(2) 離婚が贈与税や相続税を免れるために行われたと認められる場合
 この場合は、離婚によってもらった財産すべてに贈与税がかかります。