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会社設立には印鑑が必要!作成時や使用時の注意点も知っておこう

会社設立のためには、正式に法務局に登記申請をしなければなりません。さまざまな書類を作成するうえで、会社の実印である代表者印が必要になります。会社として業務をスタートさせるためには、法人口座の銀行印や角印、ゴム印なども準備する必要があります。何のために、どのような印鑑が必要になるのかわかりやすく解説するとともに、法人の印鑑の作成や使用の際の注意点も紹介します。

会社設立にあたって用意する印鑑は4種類!

会社の設立にあたり、まず揃えておくべき印鑑を紹介します。とりあえずは、代表者印、銀行印、角印、ゴム印の4種類の印鑑があれば、会社設立の際に必要な届出書や申請書、それらに付随する手続きや業務がスムーズに運びます。以下に、それぞれの印鑑について解説します。

代表者印

「代表者印」とは、会社の代表者であることを証明するための印鑑です。一般的に多く見かけるデザインは、丸の外周に会社名を配置し、内側に株式会社なら「代表取締役印」、合同会社なら「代表社員之印」などと彫られています。後述の角印と区別するため、丸い形で作られることがほとんどで「丸印」とも呼ばれています。

まずは、この代表者印がないと会社成立の登記申請ができません。法務局に届け出る印鑑は、そのまま会社の実印となる重要な印鑑です。印鑑証明書を取得する際に印影が表示されますし、重要な契約の際には必ず押印することになる、いわば会社の顔ともなる重要な印鑑です。代表者印は、商業登記規則第九条の五第三号の規定により、代表者印の大きさは印影が1cm超~3cm以内の正方形に収まるものと決められています。

つまり、印影が小さすぎるものや大きすぎるものは認められません。文字の書体や大きさは判別が可能であれば特に決まりはありません。個人名は使わず役職名で作られるため、会社の代表者が変わっても代表者印を作り直すことは不要で、それまでの代表者印を使い続けることが可能です。改印の手続きをすれば、代表者印を変更することもできます。

銀行印

銀行印とは、銀行などの金融機関で会社名義の法人口座を開設するときに、銀行届出印として登録する印鑑のことです。前述の代表者印を銀行印として登録することもできますが、会社によっては経理部門の管理者が会社の銀行印を預かることもあるでしょう。その場合、代表者印と同じ印鑑を使い回すのは何かと不都合が多いものです。銀行に出掛けるたびに毎回代表者印を持ち出すのでは、紛失や盗難に対するリスク管理として問題があります。外出先に持ち出している間は、代表者印が使えないことにもなってしまいます。そのため、一般的には、代表者印とは別に銀行取引専用の銀行印を用意することがほとんどです。

銀行印は、特にサイズなどの決まりはありません。刻印は、丸印の外周に会社名を配置し、内側に「銀行之印」と入れるデザインが多いです。一見すると代表者印の印影によく似ているため、区別しやすいよう、代表者印よりもひと回りサイズの小さいものが使われます。

角印

「角印」とは、会社名が刻印された四角い大きめの印鑑のことで、サイズに特に決まりはありません。文字は「株式会社○○○○○」と会社名だけの場合もありますし「○○株式会社之印」と「之印」を入れて見た目のバランスを取る場合もあります。代表者印や銀行印と異なり、会社名だけが記された印鑑のため「社印」と呼ばれることもあります。会社が発行する請求書、見積書、納品書、領収書、ビジネスレターなどの一般的な社外文書に広く使用されるほか、通達などの社内文書にも使われる使用頻度の高い印鑑です。大量に作成する書類などには、所定の用紙にあらかじめ角印の印影が印刷されていることも多いでしょう。

しかし、契約書などの重要な書類に代表者印と角印をセットで押印することもあり、何かの折に必要になるため作っておいたほうが安心です。角印の代わりに代表者印を使用すればよいという考え方もありますが、会社の実印という重要性を考えれば、悪用されるリスクを避けるため、代表者印が必要ない書類のすべてに無闇に押印するのは止めたほうがよいでしょう。

ゴム印

「ゴム印」は、会社設立の際に必ずしも必要となる印鑑ではありませんが、あれば設立後の日常業務に大いに役立ちます。横書きや縦書きの会社名だけのゴム印、会社名と代表者名、住所などが押印できるもの、単品を組み合わせて使うものなどさまざまなタイプのゴム印があります。パソコンで印字すれば不要と思われるかもしれませんが、仮に一通の封筒の裏面に差出人を書く場合、パソコンで書式を選んで文字入力して封筒をセットして印刷するよりも、ゴム印を押したほうが断然早いものです。

市販の綴りになっている領収書などにはゴム印が便利ですし、何かと会社の住所や会社名を手書きしなければならない場面があり出番が多いものです。その都度手書きしなければならないのでは、記入ミスも起きやすく、手間がかかります。ゴム印は、ほかの印鑑に比べて安価で短期間で作れるため、業務が始まってから用途に合わせたさまざまなサイズを見極めてから順次作っていくのでもよいでしょう。

代表者が用意する印鑑

会社を設立する場合、法人用の印鑑とは別に、代表者の個人の印鑑も必要になります。どのような種類の印鑑を用意すべきか解説します。

個人の実印

会社設立時に、発起人として公証役場に提出するほか、代表者として登記申請を行う法務局にも個人の印鑑証明書の提出が必要になります。そのためには、住所地の自治体に実印として印鑑登録をしておかなければなりません。住宅や普通自動車を購入した人は既に印鑑登録を届出済みでしょう。しかし、まだ印鑑登録をしていない場合は、個人の実印が必要です。印鑑登録は地方自治体の条例であるため、登録できる印鑑についてそれぞれに規定があります。一般的には、ゴム印や小さすぎるものや大きすぎるもの、シャチハタや流通の多い三文判、刻印が摩耗しているものなどは、印鑑登録はできません。また、既に家族が登録している印鑑と同じものを登録することもできません。

また、会社設立以外にも住宅ローンを組むときや賃貸住宅の契約、連帯保証人、遺産相続などの重要な契約を締結する際にも印鑑証明書の発行が必要になります。会社設立を機に、今までの実印を変えたい場合は、現在の印鑑登録を廃止してから、新規に実印を登録し直します。会社設立の際やほかの契約時には、会社の実印である代表者印と個人の実印を混同しないよう気をつけましょう。

個人の銀行印

個人の銀行印とは、自分名義の個人口座を作ったときに銀行に届け出ている印鑑のことです。会社設立前の資金調達や金融期間との取引、保険契約などの諸々の契約締結で必要になります。届け出た銀行印と異なる印影では、照合不一致としてすべての取引ができません。銀行や口座ごとに異なる印鑑を利用している場合は、届出印の勘違いに気をつける必要があります。銀行印は、口座の名義人の姓か名が確認できるものであれば、特に決まりはありません。ただし、宅配便や郵便物の認印として日常的に使うものとは別に用意して、通帳とは別に保管したほうがよいでしょう。

個人の認印

「個人の認印」とは、実印として印鑑登録をしていない印鑑のことを指します。個人の認印は、個人名で契約や申請をする際に必要になります。印鑑証明を必要としない軽微な契約や、申請書や申込書を提出する際などにも使います。また、手回しの社内回覧文書の押印や、手書きの記名代わりに使うこともあるでしょう。社内用には簡単に押せるシャチハタなどを使うことも多いです。

法人にふさわしい印鑑とは?

法人用に用意する印鑑は、どのようなものがふさわしいのでしょうか。ここでは、字体、サイズ、材質の3つの側面から考えてみましょう。

字体

代表者印や角印、銀行印などの法人印鑑は、基本的にどのような字体を使っても問題ありません。しかし、法人として対外的に押印する印鑑ですから、会社の字体ひとつで会社全体のイメージが左右されることもあります。あまりポップすぎる字体や平凡すぎる字体、パソコンなどで偽造しやすい字体などは避けられる傾向にあるようです。

それらを考慮して、法人印鑑では「篆書体(てんしょたい)」や「印相体(吉相体(きっそうたい))」と呼ばれる字体が多く使われています。篆書体という言葉に馴染みがないかもしれませんが、普段よく見かけるお札(日本銀行券)に使われています。お札の人物が描かれている面の「日本銀行券」と書かれた右下にある赤色の印影の文字、それが篆書体です。見てもなかなか読めない人が多いようですが「総裁之印」と読みます。

ちなみに、反対の面には朱色で「発券局長」と印刷されています。言われてみれば何となくわかるのではないでしょうか。印相体(吉相体)は、会社名の総画数を、縁起が良いといわれる吉数に加工して彫刻します。文字同士と周囲の枠とが複雑に線でつながっていて、こちらも判読が難しい字体です。この2つの字体は判読しづらく偽造されにくいため、法人用の実印や銀行印として人気があります。

サイズ

先述したように、実印として使用する代表者印は法令上の規定があり、1辺が1cm超~3cmの正方形に収まる印影のものでなければなりません。それ以外は特に規定はありませんが、実務上で使いやすい大きさがあり、はんこ屋で用意されている種類の大きさのうちから選ぶことになります。一般的には、代表者印が18.0mm、銀行印が16.5mm、認印が15.0mmです。角印は会社名の総文字数や好みにもよりますが、大体21.0mmまたは24.0mmのいずれかが多いです。これらの大きさが、さまざまな様式の書類に押印する際に使いやすい無難なサイズと言えます。

材質

印鑑は素材により価格が大きく異なります。安価な素材もありますが、できれば耐久性のある良質な素材を選んだほうがよいでしょう。よく使われるのは「柘(つげ)」という木材で、リーズナブルで軽いという特徴があります。安価なものから高価でしっかりしたものまで価格帯が分かれ、なかでも「薩摩本柘(さつまほんつげ)」は品質が高く、コストパフォーマンスに優れています。柘よりも高級なのが「黒水牛」です。黒水牛の角を加工して作られたもので、高級素材の割には比較的安価で耐久性も申し分ありません。

さらに高級なのが金属製の「チタン」です。チタンは耐久性が大変高く、重厚感がある割には程よい軽さで捺印しやすいことで定評があります。摩耗や落下などにも強く、欠けたり錆びたりすることなく、金属アレルギーも起こしません。メンテナンスも不要で最高級の品質を誇る素材のため価格は高くなります。

法人が印鑑証明を取得する流れ

会社設立時には、公的な証明を得るために実印(代表者印)の印鑑登録が必要になります。法人の印鑑登録申請は、会社の所在地を管轄する法務局で会社の登記申請と同時に行えます。法務局で印鑑カード交付申請書を提出すると、印鑑カードが発行され、以降は印鑑カードと印鑑証明書交付申請書に代表者の生年月日などを記載すれば、管轄の法務局以外でも印鑑登録証明書の取得が可能です。

法人印鑑の注意点!作成や使用時に気を付けよう

法人印鑑を作る際の注意点や、作成後の使用時における注意点を紹介します。

時間に余裕を持って発注する

会社設立の際は、慣れない煩雑な手続きが必要です。たくさんの事務手続きや書類の提出準備に追われ、法人や個人の印鑑のことにまで気が回らないこともあるようです。また、印鑑を注文したのはいいものの、完成までに思いのほか時間がかかってしまったということもあります。時間に余裕をもって早めに必要な印鑑を発注しましょう。必要な印鑑が手元にあれば、スムーズに手続きが進みます。ただし、気をつけたいのは設立予定の会社名と同じ、または酷似した名称の会社の有無です。社名入りの印鑑を作るときは作り直しを避けるため、類似商号の調査が完了してから正式に発注することをおすすめします。

捨て印や白紙委任状への押印はしない

法人の実印や銀行印は、紛失や盗難、悪用などのリスクがあるため、厳重に管理されていることがほとんどでしょう。ただし、印鑑の実物でなく押印した印影も悪用されることを避ける必要があります。書類の内容をよく把握しないまま無闇に押印することはないでしょうが、委任内容や代理人の記入欄が空欄のままの白紙委任状にも、安易に押印はしないでください。あとから口頭の説明とは異なる内容を書き加えて悪用されるおそれがあります。

また、契約書などの余白にあらかじめ捨て印を押すことがありますが、法人印鑑を使って捨て印をすると、あとから契約内容の訂正や改ざんがあっても、捨て印があれば会社として承諾したことになってしまいます。過去には、捨て印を利用した悪質な契約トラブルも発生しているため、法人印鑑を乱用しないよう気をつけてください。

さっそく印鑑を作成して会社設立に備えよう!

法人印鑑は、対外的に重要な役割を持つ唯一無二の大切な存在です。素材やデザインにこだわって、長く使えるお気に入りの印鑑を作成して会社設立の手続に備えましょう。ただし、印鑑完成後は、印鑑の管理を徹底する必要があります。押印の際は無用のトラブルに巻き込まれないためにも、無闇に乱用することのないよう十分に気をつけてください。