配偶者控除とは?わかりやすく解説!所得控除のうちの夫婦の節税
所得税というのは、所得がある人に対して課せられる税金です。
この所得税に関しては、子どもがいると税金が安くなる、生命保険に入っていたら税金が安くなるなどといった、14種類の所得控除があります。
また、所得控除の中には、配偶者がいる場合に適用される、配偶者控除という制度があります。
似たような名前の配偶者特別控除という制度もあるため、区別や違いというのが、なかなかわかりやすくできていません。
そこで、ここでは、配偶者控除とは何なのかについて、わかりやすく解説していきたいと思います。
目次
配偶者控除とは?配偶者特別控除との違いについて
少しややこしいのですが、扶養の制度は、社会保険上と税制上では異なります。
そして、税制上では、配偶者は、扶養家族とはならず、その代わりに、配偶者控除または、配偶者特別控除という制度の対象となるのです。
そして、配偶者を扶養している場合に、納税者は、条件に該当した場合には、税負担が軽くなるということになります。
これを、配偶者控除、配偶者特別控除と呼びます。
制度について理解できたところで、配偶者控除の対象となるのはどのような場合なのかについて見ていきたいと思います。
配偶者控除の対象は?
配偶者控除の条件は以下を満たしている場合となります。
- 民法の規定による配偶者であること
- 納税者と生計を一にしていること
- 年間の合計所得金額が48万円以下であること
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
それぞれについて見ていきたいと思います。
1.民法の規定による配偶者であること
所得税の計算は、その年の1年間分の所得を年末に計算するため、配偶者控除を受けるには、その年の12月31日時点で民法の規定による配偶者であることが条件となります。
民法の規定による配偶者というのは、いわゆる婚姻状態にあるということになります。
そのため、事実婚や内縁状態の場合には、配偶者控除を受けることはできません。
社会保険上での扶養は、事実婚や内縁状態の場合でも認められるという違いがあります。
2.納税者と生計を一にしていること
「生計を一にしている」とは、同居している必要があるという意味ではありません。
単身赴任などをしていても、生活費を送っているなどという場合には、この条件に該当します。
3.年間の合計所得金額が48万円以下であること
年間の合計所得金額が48万円以下であること(給与所得のみの場合は給与収入が年間103万円以下)となります。
基礎控除額は一律で48万円なので、所得が48万円であれば、課税所得が0円になります。
給与のみの場合に、103万円以下となるのは、基礎控除48万円+給与所得控除55万円で控除額の合計が103万円となるためとです。
4.青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと又は白色申告者の事業専従者でないこと。
書かれていることは難しいですが、わかりやすくいうと、納税者が個人事業主の場合に、そこで従業員として給料を得ていない場合という意味です。
上記の4つの条件を満たしており、納税者本人の収入が給料のみの場合には年収1,220万円(合計所得金額が1,000万円)までの場合が条件となります。
配偶者特別控除の対象は?
配偶者特別控除の場合は、上記の配偶者控除の「1.」「2.」「4.」の条件は同じです。
配偶者控除と配偶者特別控除の違いは、配偶者の所得制限です。
配偶者控除の場合は、年収103万円以下というのが条件でしたが、配偶者控除の場合は、201万6千円未満となります。
配偶者控除・配偶者特別控除によって所得控除される金額は?
それでは、配偶者控除・配偶者特別控除のそれぞれによって、納税者が所得控除される金額はいくらくらいなのでしょうか。
配偶者控除による所得控除額は?
配偶者控除の制度が使えると、納税者は、年間38万円が所得控除されます。
納税者の年収(所得金額) | |||
1,120万円以下 (900万円以下) | 1,120万円超1,170万円以下 (900万円超950万円以下) | 1,170万円超1,220万円以下 (950万円超1,000万円以下) | |
控除額 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
ただし、納税者の年収が1,120万(所得額900万円)を超えると、段階的に控除額は減っていきます。
配偶者特別控除による所得控除額は?
配偶者の年収が103万円を超えた場合には、配偶者特別控除の対象となります。
控除金額は以下の通りとなります。
配偶者の年収 | 納税者の年収(所得金額) | ||
1,120万円以下 (900万円以下) | 1,120万円超1,170万円以下 (900万円超950万円以下) | 1,170万円超1,220万円以下 (950万円超1,000万円以下) | |
103万円超 150万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
150万円超 155万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
155万円超 160万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
160万円超 166万8千円未満 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
166万8千円以上 175万2千円未満 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
175万2千円以上 183万2千円未満 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
183万2千円以上 190万4千円未満 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
190万4千円以上 197万2千円未満 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
197万2千円以上 201万6千円未満 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
配偶者特別控除では、納税者の年収だけでなく、配偶者の年収によっても、段階的に、控除される金額が変わってきます。
配偶者の年収が201万6千円までは、控除の対象となります。
結局、どのくらい課税負担が減るの?
配偶者控除、配偶者特別控除のいずれでも、満額では38万円控除されることがわかりましたが、これは、納税者の税金が38万円引かれるというわけではありません。
納税額というのは以下のように計算されます。
そのため、控除される38万円がそのまま控除されるわけではありません。
控除される金額に所得税率を掛けたものが、控除されるということになります。
所得税率は、年収によっても異なりますし、所得控除は、配偶者控除だけではありませんので、計算が非常に複雑になります。
また、住民税についても、控除の対象となりますので、実際に配偶者控除を利用することで、どのくらいの税金で得をするのかを簡単に説明いたします。
配偶者控除の対象となる場合には、住民税は一律で33,000円控除されます。
そして、所得税については、納税者の年収に応じて、2万円~7万円程度控除されることになります。
そのため、配偶者控除の制度を利用すれば、年間で、住民税と所得税を合計で、5万円~10万円得することになります。
配偶者控除・配偶者特別控除を利用して税金で損をしないように!
このように、配偶者控除や配偶者特別控除というのは、所得税や住民税の課税において、納税者には、非常にメリットのある制度となります。
しかし、配偶者がいれば、自動的に制度が適用されるというわけではありませんので、注意が必要です。
配偶者控除または配偶者特別控除を受ける場合には、年末調整の際に、給与所得者の配偶者控除等申告書という書類を提出する必要があります。
独身で一人の分の所得であれば、基本的に、収入が多ければ多いほど、手取り金額は増えていきます。
しかし、結婚して配偶者や子供がいる場合には、世帯での手取り金額を増やす場合には、税金との兼ね合いを考えることが重要になります。
このように、制度を知って、損をしないように働くことは、家族でしっかりと話し合うことが重要なのではないでしょうか。