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経費処理できる「短期前払費用」とはなにか? | 「税金経営」の時代

短期前払費用は、一定の継続的な役務提供契約が締結されているもので、向こう 1年内に発生する費用を支払うものです。具体的には家賃、保険料、支払利息などでこれらを前払いすることで、一括して経費として落とすことができます。
会社は事業年度ごとに決算を組んで、税務署に申告書を提出します。通常事業年度は1年ですので、1年間の損益を損益計算書としてまとめることになります。発生主義という言葉をお聞きになった方もいらっしゃると思いますが、これは損益の認識(会計、税務の処理)基準を資金の入出金時に行う(これを現金主義といいます)のではなく、収益であれば相手方に対して請求することができるとき、費用であれば相手方に対して、支払い義務が生じたときに認識しようというものです。損益の認識の大原則が発生主義なのですが、税務上、特例が認められているものがあります。いわゆる「短期前払費用」といわれるものが、それです。短期前払費用に該当した場合、発生主義にかかわらず、支出時において会社の経費として認められることになります。短期前払費用とは、次の要件に該当するものをいいます。

1.一定の継続的な役務提供契約が締結されている。

2.事業年度終了時にまだ役務の提供を受けていないもの。

3.1年以内に役務の提供を受けるものですでに支出されたもの。

4.毎年継続して支出が行われるもの。
これらの要件を満たした支出については、支払時に全額を経費処理することができます。典型的な事例では、家賃の前払い、保険料の前払い、支払利息の前払いなどですが、要件にあるように、毎年継続して前払いを行うことが必要となります。契約上、向こう1年間の家賃を毎年3月に支払うことになっており、事実、契約通り継続して支出した場合、支払時の経費として全額処理することができます。
従来、毎月支払っている契約内容を見直して向こう 年間前払いとする変更を行なった場合も、変更理由が明確になっているのであれば、要件に該当するとして経費処理することができます。
短期前払費用の対象は、販売費及び一般管理費に該当するものに限定されていますので、たとえば、工場の賃料の前払いや製造設備の賃料の前払いなどは、販売費でもなく一般管理費でもなく、原価に該当するものですので、原則通り発生基準で処理することになります。
節税対策として短期前払費用の支出が行われることがありますが、継続的に行う必要があるのと資金がキャッシュアウトするデメリットがありますので、そのあたりを踏まえて選択することになります。

事務処理が楽、支払い金額が全額経費になるなどメリットはいっぱい

税務上、支出金額に限度額は設けられていませんが、多額になるような場合、前払い目的や資金負担の点で課題が残されますので、無理のない範囲で進めることになります。
また、借入金で調達した資金を株式運用等のために使用しているような場合、その借入金にかかる支払利息は、短期前払費用とはなりません。運用等による収益との関連性があるため、原則通りの発生主義による処理となります。
短期前払費用で処理した場合のメリットは、次の通りです。

1.事務処理が楽になる(支払う頻度が少なくなる)

2.年払い(半年払いなど 年以内であればOK)にすることで、賃料等を安くできる可能性がある

3.支払金額が全額経費となるため税負担が減少する
デメリットとしては、前倒しで資金が支出されるため、手元資金がその分減少するのと支出先の信用不安がでてきたときの問題があげられます。