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未成年で会社を設立するときの注意点とは?成人との違いについて解説

最近はネットビジネスに代表されるような元手がかからず時間拘束も少ない事業が可能となっています。このため、以前と比べると未成年が事業を行うことへのハードルは下がっているといえます。ただ、未成年の場合には成人と法的な扱いが異なる点に注意が必要です。そこで、未成年で会社を設立する場合に注意した方が良い点や必要となる手続などについて説明します。

1.未成年は一人で契約ができない?

そもそも未成年だと携帯電話の契約とかに親の同意が必要だったりするよ。
さとし君
さとし君
そうですね。民法では未成年が契約などといった法律行為をすることを制限していて、親などの法定代理人の同意を得なければならないとされています。
松浦弁護士
松浦弁護士
今は20歳未満を未成年としているけれど、2022年からは18歳未満が未成年となることにも注意しよう。
マリオ教授
マリオ教授

1-1.未成年者に対する法律行為の制限

未成年の場合、会社設立だけでなく契約などの法律行為一般について制限があります。民法において、「未成年者が法律行為をするには、その法定代理人の同意を得なければならない。」と定められており、法定代理人の同意を得ずに法律行為を行った場合には、理由を問わず後から取り消すことができる扱いとなっているのです。
ここでいう「法定代理人」とは、原則として親のことです。また、「法律行為」というのは、物の購入や売却、お金を借りるなどといった取引行為全般を指しています。
未成年で携帯電話を購入する際に親権者の同意書の提出を求められた経験がある人は多いと思います。これも、未成年者が法律行為を制限されていることの一例です。なお、親からもらったお小遣いで物を買うような日常的な行為については、法定代理人である親が包括的に同意しているとみることができるため、個別に親の同意を得る必要はないといえます(民法5条3項)。

1-2.成人年齢は18歳に引き下げられる

ところで、「未成年」の年齢については従来20歳未満の者を指していましたが、民法の改正によって年齢が引き下げられ18歳未満を未成年とすることになります。改正法は、2022年から施行されます。したがって、大学生の起業などはこれまでより容易になるでしょう。

2.未成年が会社を設立できる場合

未成年が契約などをするときに親の同意が必要だとすると、会社を経営するために必要な契約についても親から同意を得ないといけないの?
さとし君
さとし君
民法では、親から事業をすること自体について許可を得ていれば、事業で必要となる契約のつど親から同意を得る必要はないとされています。
松浦弁護士
松浦弁護士
事業上の契約について個別に親から同意が必要だとすると、事業に差し障るものね。
アンナ先輩
アンナ先輩
ただ、取締役として登記するためには印鑑証明が必要だけど、印鑑登録は15歳以上でないとできないんだ。だから、実際には15歳未満の未成年が会社の役員になることは難しいよ。
マリオ教授
マリオ教授

2-1.事業に関しては成人と同じ扱い?

未成年が契約をする際に親から同意が必要だというのが民法の原則です。そうだとすれば、未成年が会社の代表取締役になった場合に会社の代表者として契約ができないのでしょうか。結論からいうと、事業に関する契約に関しては未成年でも親からの同意を得ずに契約を可能とする例外規定があります。ただし、成人とは異なる手続が必要となります。
民法上、未成年者が事業を行う場合には法定代理人である親から事業を行うことについて許可を得る必要があります。そして、親から許可を得た事業において生じる取引に限っては成年と同様の扱いとし、個別に親から同意を得る必要はないこととされています。
なお、商法では未成年者が商法上の事業を行う場合にその旨の登記が必要とされている点にも注意が必要です。

2-2.未成年が発起人となる方法

発起人とは会社設立手続を行う者をいいます。通常、発起人が会社設立後の取締役に就任します。
発起人について会社法上は年齢制限がありません。したがって、未成年でも発起人となることができます。ただし、法定代理人である親から事業に関する許可を得た旨の書面を用意しておく必要はあります。
また、会社設立手続の中で作成する定款の末尾には、発起人が実印を押す必要があります。実印とは印鑑登録された印鑑のことをいいますので、実印で押印するためにはそもそも印鑑登録が可能でないといけません。ところが、印鑑登録ができるのは15歳以上となっています。
このため、会社を設立する未成年が15歳未満の場合には親に代わりに押印してもらうといった工夫が必要です。ただし、次に説明するように15歳未満だと印鑑登録ができないため取締役として登記することはできません。したがって、15歳未満の未成年が発起人となったとしても会社設立後に取締役に就任することができないため、15歳未満の者が発起人となることはあまりないといえます。

2-3.未成年が取締役となる方法

会社には取締役会を設置する会社と設置しない会社があります。設立当初の会社の多くは取締役会を設置しないと思われますが、いずれを選択するかによって未成年が取締役となれるかの結論が異なります。

2-3-1.取締役会を設置しない会社の場合

取締役となるためには登記が必要であるところ、取締役会を設置しない会社において取締役として登記するためには就任承諾書に実印を押印する必要があります。したがって、印鑑登録ができない15歳未満の未成年は取締役として登記ができないこととなります。
15歳以上の未成年者の場合には印鑑登録が可能ですので取締役に就任することができます。

2-3-2.取締役会を設置する会社の場合

取締役会を設置している会社の場合、登記にあたって実印が必要となるのは代表取締役のみです。したがって、代表権のない取締役となる場合に限り15歳未満の未成年者でも取締役に就任することが可能です。ただし、次に説明するように意思能力の問題があるため、代表権のない取締役となる場合でも何歳でもよいわけではありません。

2-3-3.取締役となるためには意思能力も必要

取締役会を設置する会社だからといって何歳でも未成年が取締役となれるわけはありません。取締役となる以上は業務執行について正しい判断ができることが前提となるため、少なくとも意思能力または責任能力が認められる年齢に達しないと取締役としての登記申請が受け付けられないことがあります。
意思能力とは、契約などの法律行為によって権利や義務がどのように変化するかということを正しく理解できる能力をいいます。一般的には、おおむね10歳未満の未成年は意思能力を欠くとされています。
なお、登記申請をする法務局によっては意思能力では足りず責任能力まで必要とされることもあります。責任能力とは、自分の行為に伴う責任を認識して行動をコントロールできる能力をいいます。一般的には、おおむね12歳未満の未成年は責任能力を欠くと判断されます。
したがって、10歳未満または12歳未満の未成年は会社が取締役会を設置していたとしても取締役に就任できないと考えておいた方がよいでしょう。

2-4.15歳未満で会社設立することは現実的か

15歳未満の未成年者が会社を設立して代表取締役に就任することは登記との関係からは困難であり、可能なのは会社が取締役会を設置した上で代表権を持たない取締役となる方法ということでした。
ただ、取締役会を設置するためには取締役を3名以上用意する必要があります。また、取締役会を設置する場合にはあわせて監査役なども設置しなければならないこととされています。設立当初の会社において、そのような機関を設置することは人材確保や人件費との関係から通常は困難です。
以上から、15歳未満の未成年者が会社を設立することは現実的とはいえません。なお、登記に関しては法務局によって扱いが異なる可能性があるため、実際に未成年で会社設立を検討している場合には事前に管轄法務局や司法書士などの専門家に相談してください。

3.未成年が会社設立する際の注意点

未成年が会社設立をするのは大変なんだね・・・
さとし君
さとし君
そうですね。とはいえ、若いから一概に判断能力が劣るとも限りませんし、若者ならではの新しい発想で事業に取り組めるというメリットもあります。
松浦弁護士
松浦弁護士
手続が少し面倒ではあるけれど、未成年の人たちも果敢に会社経営に取り組んで欲しいね。
マリオ教授
マリオ教授
もともと未成年者が法律行為をするについて親の同意が必要とされているのは、社会経験の乏しい未成年者を保護する趣旨です。事業について親の許可を得ることで成年と同様に扱われることは良いようにみえる一方で未成年に対する保護が受けられなくなることも意味します。したがって、未成年で会社設立をする場合には十分な注意が必要です。
もっとも、新しい発想をもつ未成年だからこそできる事業もあるでしょう。せっかくのアイディアを活かすためにも、未成年で会社を設立する場合には、重要な事業上の意思決定をする前に弁護士や税理士などの専門家などに相談できるような環境を整えておくことが重要です。

4.会社設立の際には専門家に相談を

今回は、未成年が会社を設立する場合の注意点について説明しました。未成年が取締役となるためには成人と異なる考慮が必要です。会社設立において必要な手続は複雑ですが、税理士や司法書士などの専門家に相談すれば自分ですべてを行うよりスムーズに進めることができます。どのような事務所に相談するべきかわからないという場合は、まずは本サイトの窓口へ問い合わせてみましょう。

著者情報
松浦絢子 弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法科大学院出身。東京弁護士会所属(登録番号49705)。

松浦綜合法律事務所

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