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会社設立に必要な定款について解説!記載事項や認証手続とは

会社を設立する際には、定款を必ず作成する必要があります。とはいえ、定款は会社の内部ルールであり公開されていないため、実際に定款を見たことのある人はそう多くはないでしょう。そこで、今回は定款の記載事項や必要な手続について詳しく説明します。(文:松浦絢子弁護士/松浦綜合法律事務所)

1.定款とは何か

定款って実際に見たことないんだけど、どんなものかな?
さとし君
さとし君
さとし君はまだ会社で働いたこともないから,
見たことないのも無理はないわね。
アンナ先輩
アンナ先輩
会社の定款は会社の内部規程の一つですが、すべての規程に優先するものでありいわば会社にとっての憲法にあたるものです。
記載内容や変更のための手続も法定されているので定款の作成は慎重に行う必要があります。
松浦弁護士
松浦弁護士
定款を作成した後は公証役場で認証という手続も必要だよ。
場合によっては専門家にも相談しつつ十分に準備をして進めることが肝心だね。
マリオ教授
マリオ教授

1-1.定款は会社の根本規則

会社の管理部門に所属していたなどの経験があれば別ですが、会社の定款というものを見たことが無い人が大多数だと思います。定款とは、会社の根本的なルールを定めた規程です。いわば、会社にとっての憲法のような存在であり、会社の事業は定款に従って行う必要があります。

1-2.定款の記載事項は法定されている

定款に記載すべき事項は会社法によって定められています。定款記載事項としては、絶対的記載事項、相対的記載事項、任意的記載事項の3種類があります。
絶対的記載事項は、必ず定款に記載しなければならない事項で、①商号(会社名)、②会社の本店所在地、③資本金額、④事業目的、⑤発行可能株式総数、発起人の氏名または名称・住所がこれにあたります。
相対的記載事項は、定款に記載がなくても定款自体が無効になることはないものの、定款に記載すればその事項が有効になるというものです。例えば、株式の譲渡制限、取締役会や監査役等の一定の機関の設置、取締役の任期の短縮・延長などが相対的記載事項にあたります。
任意的記載事項は、会社が自由に記載するかを決める事項です。定款に定めることの意味は後でも説明しますが、変更の際の法的ハードルが上がるという点にあります。したがって、会社にとって重要であり容易に変更したくないものについては任意的記載事項として敢えて定款に記載するということが考えられます。
例えば、事業年度や定時株主総会の開催時期を任意的記載事項として定める例があります。一方で、変更可能性がそれなりにある事項については定款に記載するとかえって煩雑となるため注意が必要です。

2.定款作成後の手続

定款を作成したらそれで終わりではないわ。
ほかにどんな手続があるか知っている?
アンナ先輩
アンナ先輩
たしか、公証役場に行くという話を前に聞いたことがある…
さとし君
さとし君
よく覚えていましたね。
定款を作成した後は、公証役場において定款認証の手続を行う必要があります。
これをしないと会社設立登記を受け付けてもらえません。
松浦弁護士
松浦弁護士
認証手続が必要となる会社は株式会社であり、合同会社とする場合には不要となっているよ。
この意味でも合同会社は設立手続が簡単だといえるね。
マリオ教授
マリオ教授

2-1.公証役場での定款認証

定款を作成したら、公証役場で認証を受ける必要があります。認証が必要となるのは、株式会社、一般社団法人、一般財団法人です。したがって、設立する会社が合同会社である場合には定款認証の手続は不要となります。
認証とは定款が法律に従って作成されていることを公証人が確認し、証明する制度です。公証役場は全国にありますが、基本的には設立する会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する公証役場を利用します。公証役場を利用する場合には、事前に電話連絡し日時を調整した上で訪問することが一般的です。また、手続に関する疑問点などがあればあわせて確認しておくとよいでしょう。
公証役場には完成した定款を持参する必要があります。したがって、認証までに製本や押印をすべて済ませた状態にしておかなければなりません。定款は3通用意します。なぜ3通かというと、公証役場に保存されるもの、会社設立登記申請時に法務局に提出するもの、会社で保存するものが別に必要となるからです。
用意した3通の定款すべてについて、発起人全員が氏名欄に押印し、また製本後の冊子の継ぎ目に契印(割印)を押します。これらの押印は発起人個人の実印を使用します。
公証役場に行く際には、定款のほか、発起人全員の実印および印鑑証明書、収入印紙、公証人の手数料、定款謄本の交付手数料なども持参する必要があります。手数料の金額などは事前に公証役場に確認しておきましょう。
認証手続には発起人全員で行くことが基本なのですが、難しい場合には欠席する発起人から実印を押印した委任状を作成してもらい、他の発起人がその委任状を持参すればよいこととされています。なお、欠席する発起人についても印鑑証明書の用意が必要である点に注意しましょう。
なお、2018年11月30日から定款認証の際に、会社設立時に実質的支配者となるべき者の氏名、住居および生年月日等と、その者が暴力団員および国際テロリストに該当するか否かを公証人に申告することが義務付けられています。
実質的支配者とはマネーロンダリング等の防止を目的とする犯罪収益移転防止法に基づく概念です。具体的には、法人の事業経営を実質的に支配することが可能となる関係にある個人が実質的支配者であり、会社設立の場面では出資者や代表取締役となるべき発起人がこれにあたることが通常です。

2-2.認証後の定款を登記申請時に提出

認証手続きを経た定款は、会社設立手続の締めである会社設立登記の申請時に法務局に提出します。登記事項の多くは定款記載事項と重複していますので、登記申請の内容と定款記載事項が一致していることを確認しましょう。
なお、会社設立登記の申請については、以下の記事でも詳しく説明しています。

会社設立登記の必要書類は?申請方法についても説明

3.会社設立後の定款変更

会社設立時に定款を作成することはわかったけど、設立後に内容を変更することはできるの?
さとし君
さとし君
作成した定款を後で変更することは可能です。
ただし、原則として株主総会の特別決議が必要となるなど定款の変更には法的なハードルがあります。
松浦弁護士
松浦弁護士
そもそも定款は会社にとって重要な事項を定めているから、簡単に変更できないことが前提なのよ。
アンナ先輩
アンナ先輩

定款は会社設立時に発起人が必ず作成しますが、会社設立後に内容を変更することももちろん可能です。もっとも、定款を変更するための要件として株主総会の特別決議が要求されています。特別決議とは、議決権を行使できる株主総会に議決権の過半数を有する株主が出席し、かつ出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を要するものです。
株主総会における決議要件は、議決権を行使できる株主の議決権の過半数を有する株主の出席し、かつ出席株主の議決権の過半数の賛成を要する普通決議が原則であり、特別決議は重要な議題について要件を加重したものという位置づけです。したがって、定款変更に特別決議を要するということは、定款変更への法的なハードルがそれなりに高いことを意味します。
株主総会で無事に定款変更が可決された場合、変更された事項が登記事項であれば登記申請も必要となります。登記申請のためには、定款変更が可決されたことを記載した株主総会議事録を利用します。

4.会社設立の際には専門家に相談を

今回は会社設立手続の中で重要な位置を占める定款の作成について説明しました。定款の記載事項は会社経営の基本となる事項ばかりですので、どのような内容を記載するかは慎重に考える必要があります。
定款の作成に関しては司法書士や行政書士登録をしている税理士などの専門家に内容を確認してもらうことも可能です。どのような事務所に相談するべきかわからないという場合は、まずは本サイトの窓口へ問い合わせてみましょう。

著者情報
松浦絢子 弁護士
松浦綜合法律事務所代表。京都大学法学部、一橋大学法科大学院出身。東京弁護士会所属(登録番号49705)。

松浦綜合法律事務所