社会保険料の計算に交通費は含まれる?標準報酬月額の対象範囲は
会社から給与を支払う際には、電車などで通勤する従業員には、交通費も支給することが一般的となります。
そして、給与からは、社会保険料などを控除する必要があるのですが、この社会保険料を決定するもとになるのが、標準報酬月額というものになります。
この標準報酬月額を決定するための給与には、交通費も含まれるのでしょうか。
交通費が含まれるのであれば、交通費が高いほうが、社会保険料の支払いが多くなってしまい、会社も本人も負担が大きくなりますよね。
そこで、ここでは、社会保険料の計算に交通費は含まれるのかどうか、標準報酬月額の対象となる範囲はどこまでなのかについて、くわしく見ていきたいと思います。
目次
交通費は社会保険料の計算に含まれる?
会社側からすると、給与も交通費も総額で支給するものなので、できれば交通費がかからない、少ない従業員を雇用したいところですよね。
そうはいっても、優秀な人材を確保しようと思うと、思い通りにはいかないというのが現実ではないでしょうか。
また、従業員の立場からしても、なるべく通勤に時間はかけたくないと思うけれども、近くに良い職場があるわけではないといったところでしょうか。
そのため、たいていの人が何らかの交通手段を用いて、その分の交通費を給与と合わせて、会社が支給することになります。
しかし、この交通費は、実際に必要となる出費であり、労働に対する対価ではありません。
このような交通費にも、社会保険料はかかるのでしょうか。
交通費は社会保険料の計算に含まれる?
社会保険料の金額を計算するためには、標準報酬月額というものを用います。
これは、毎年4月から6月の給与の額によって、決定されます。
この報酬とは、従業員の労働の対価として、事業主が支払うものです。
そうすると、交通費は通勤しているだけなので、労働ではありません。
しかし、社会保険においては、標準報酬月額に、交通費を含むことになっているため、社会保険料には、交通費は含まれることになっています。
交通費がまとめて支給される場合はどうなる?
交通費は、定期代などとして6ヶ月分や3ヶ月分をまとめて、支給されることが多いかと思います。
そうすると、標準報酬月額が決定される4月から6月に支給された場合と、そうではない場合で、社会保険料が変わってくるのでしょうか。
このように、交通費の支給月で、社会保険料が変わってしまわないように、標準報酬月額を算出する際には、交通費は、1ヶ月分で計算することになっています。
ただし、出張による旅費や営業のための交通費などを実費で精算した場合には、社会保険料の対象になりません。
交通費は非課税?
社会保険料の計算には、交通費が含まれます。
しかし、交通費は非課税なので、所得税の計算を行う際には、含まれません。
ただし、非課税の限度額がありますので、それを越えた場合には、課税対象となります。
電車などの公共交通機関の場合は、1ヶ月の運賃の限度額15万円となっています。
自動車や自転車などの場合には、距離に応じて、限度額が定められています。
社会保険料を決定する標準報酬月額の対象・範囲は?
交通費も社会保険料の計算に含まれますが、この社会保険料を決定する標準報酬月額について、対象や範囲、決定のタイミングはいつなのかについて、くわしく見ていきたいと思います。
社会保険料を決定する標準報酬月額とは?
社会保険料は、従業員に支払われる給与によって、決定されます。
その際の計算に用いられる基準額というのが、標準報酬月額となります。
そして、これは、都道府県ごとに、健康保険は50等級、厚生年金は30等級に分けられています。
協会けんぽの場合は、こちらに都道府県別の保険料額が記載されています。
標準報酬月額の対象・範囲は?
報酬の対象となるもの(現金で支給されるもの)
- 基本給(月額、時給、日給等)
- 諸手当(通勤費、時間外手当、家族手当、住宅手当、役付手当、勤務地手当等)
- 賞与、決算手当等(年4回以上支給されるもの)
報酬の対象となるのは、基本給以外にも、通勤費、時間外手当、家族手当などといった、会社からもらうお金は、大半が報酬の対象となります。
賞与など臨時で支給されるものについても、年に4回以上の支給の場合には、報酬の対象となります。
報酬の対象となるもの(現物で支給されるもの)
- 通勤定期券、回数券
- 社宅
- 食事、食券
- 被服(勤務服でないもの)
- 自社製品
現物で支給された場合にも、上記のものは、金額相当分が報酬とみなされます。
報酬の対象とならないもの(現金で支給されるもの)
- 賞与など(年3回までの支給)
- 結婚祝金、病気見舞金、慶弔見舞金など
- 退職金、解雇予告手当など
- 出張旅費、交際費など
- 傷病手当金、休業補償給付などの公的保険給付
年3回までの賞与は、別で社会保険料対象となるため、標準報酬月額には含まれません。
年3回までの賞与の社会保険料は、支給されるごとに計算されます。
結婚祝金、病気見舞金、慶弔見舞金など、労働の対価とは言えないものは報酬には含まれません。
出張旅費や交際費などの立替金を清算したようなものも報酬には含まれません。
報酬の対象とならないもの(現物で支給されるもの)
- 制服や作業着(業務に要するもの)
- 見舞い品
- 食事(※本人の負担額が、厚生労働省が定める価格により算定した額の2/3以上の場合)
上記の場合の現物支給されるものは、報酬とはなりません。
標準報酬月額の決定・改定のタイミングは?
社会保険料の計算のもととなる、標準報酬月額は、以下の4つの場合に決定・改定されます。
- 資格取得時の決定
- 定時決定
- 随時改定
- 産前産後休業・育児休業終了時の改定
それぞれについて詳しく見ていきたいと思います。
資格取得時の決定
会社に入社した時など、社会保険に加入して被保険者となる際に、標準報酬月額が決定されます。
資格取得から5日以内に、健康保険・厚生年金被保険者資格取得届という書類を管轄の年金事務所に提出します。
なお、資格取得時決定の適用期間は、1月〜5月に入社し取得した場合は、その年の8月まで、6月〜12月に入社し取得した場合には、翌年の8月までとなります。
定時決定
定時決定とは、毎年、7月に、4月から6月の3ヶ月間の給与の平均金額によって標準報酬月額を見直し決定することをと言います。
7月1日~7月10日に、「健康保険・厚生年金被保険者報酬月額算定基礎届」というものを管轄の年金事務に提出します。
この定時決定された標準報酬月額は、9月~翌年の8月までが適用期間となります。
随時改定
定時決定により決定された標準報酬月額は、原則として1年間適用されます。
しかし、この間にも、給与額に大きな変動があった場合には、随時改定というものを行う必要があります。
随時改定は、以下の3つの条件全て該当した場合、行わなければなりません。
- 昇給・降給により固定的賃金の大幅な変動がある
- 支払基礎日数が17日以上ある
- 2等級以上の差が生じている
上記の3つの条件に該当した場合には、健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届というものを、すみやかに管轄の年金事務に提出することになります。
1月〜6月に改定した場合は、その年の8月まで、7月〜12月に改定した場合には、翌年の8月まで適用されます。
産前産後休業・育児休業終了時の改定
産前産後休業や育児休業が終わって会社に復帰した後は、時短勤務などとなる可能性があり、報酬が大きく下がる場合があります。
このような場合に、届け出を出すことで、標準報酬月額を改定することができます。
下記の2つの条件にいずれにも該当した場合に改定の対象者となります。
- 産前産後休業・育児休業に入る前と後で標準報酬月額に1等級以上の差が生じる
- 休業終了日後3ヶ月のうち、1ヶ月は報酬の支払いの基礎日数が17日以上ある
産前産後休業終了時報酬月額変更届または、育児休業終了時報酬月額変更届をすみやかに、管轄の年金事務に提出します。
1月〜6月に改定した場合は、その年の8月まで、7月〜12月に改定した場合は、翌年の8月まで適用されます。
交通費が多いと社会保険料の負担が大きくなる!
会社までの通勤距離が遠くても、交通費は会社持ちなので負担はないと思っている人も多いかもしれません。
しかし、交通費は社会保険料の計算に含まれるため、天引き徴収される金額は大きくなってしまいます。
そのため、実は、損をしているというようにも考えられます。
また、通勤に時間がかかるということは、その分、時間も使ってしまっていることになります。
このあたりをよく考えて、仕事選びは慎重になった方が良いですね(^^♪