1. HOME
  2. ブログ
  3. マリオ教授の起業ゼミナール
  4. 会社経営の基礎知識
  5. 有給
  6. 有給休暇の前借りは違法?有給のない従業員は計画年休の際にどうする

有給休暇の前借りは違法?有給のない従業員は計画年休の際にどうする

労働基準法では、有給休暇は、入社して6ヶ月後に10日間付与するように規定されています。

しかし、もし、入社して間もない従業員から、「有給休暇を前借りしたい」と言われた場合には、会社としてはどうするできでしょうか。

また、それ以外にも、有給休暇の計画的付与制度を導入している会社で、計画年休の日に、有給がまだ付与されていない従業員に、有休を前貸ししても良いのかというパターンも考えられます。

そこで、ここでは、有給休暇前借りは法律的にどうなのか、また、実際の運用上、会社にはどのような問題点や注意点があるのか、ということについて、くわしく見ていきたいと思います。

有休休暇の前借り・前貸しは違法?

入社から6ヶ月経っていない従業員から、有給休暇の前借をお願いされた場合にはどう対応するのが良いでしょうか。

また、有給休暇の計画的付与制度を取り入れている場合に、計画年休の際に、有給のない社員がいる場合にはどうするのが良いのでしょうか。

労働者に有給休暇を前借りする権利はある?

まずは、入社から6ヶ月経っていない従業員から、有給休暇の前借りをお願いされた場合について、見ていきたいと思います。

この場合には、労働者には、有給休暇を前借りする権利は、労働基準法では定められていません。

そのため、労働者から要求された場合でも、会社側には応じる義務はありません。

法律で定めがなかったとしても、このような場合に、前借りを認めてあげるように、会社側が対応してあげることは問題はないのでしょうか。

会社が、有給休暇の前借りを認めるかどうかについては、その会社での有給休暇の付与が労働基準法通りなのか、それ以上に与えられているのかで変わってきます。

会社が有給休暇を法定通りに付与している場合

会社が有給休暇を法定通りに付与している場合には、労働者が前借りした有給休暇を、その後に与えられる法定の有給休暇の日数から差し引くことはできません。

例として、有給休暇が付与される前に、2日分の有給休暇を前借りしたとします。

そうすると、入社から6ヶ月が経過した際に、10日間付与された有給休暇から、前借りの分の2日を差し引いて8日分の有給休暇を付与することになるなります。

しかし、会社側がこのような付与の仕方をすると、労働基準法違反になる可能性があります。

労働基準法には以下のような定めがあります。

使用者は、その雇入れの日から起算して6箇月間継続勤務し全労働日の8割以上出勤した労働者に対して、継続し、又は分割した10労働日の有給休暇を与えなければならない。
(労働基準法第39条第1項)

そのため、前借りしていても、6ヶ月後には、10日間の有給休暇を付与しなければいけません。

会社が有給休暇を法定以上に付与している場合

就業規則などで、法定以上の日数の有給休暇を付与している会社もあります。

例えば、入社から6ヶ月経過した際に、有給休暇を15日付与しているとします。

そうすると、有給休暇が付与される前に、2日分の有給休暇を前借したとしても、6ヶ月経過した際に、2日分差し引いて、13日分の有給を付与することになります。

この場合だと、さきほどのように、労働基準法には違反することにならないので、会社独自の制度を定めることは問題ありません。

計画年休の際に、有給を前貸しするのは違法?

有給休暇は、基本的に、労働者が希望する時季に取得することになります。

しかし、有給休暇のうち、5日を超える部分については、全労働者を同一の日に休みにしたり、グループや部署ごとに休みにしたりすることが可能となる制度があります。

これを計画的付与制度と言いますが、労使協定の合意で可能とすることを就業規則等に明記する必要があります。

そして、労働者の過半数で組織する労働組合、または、労働者の過半数を代表する者との間で書面での労使協定を行います。

この制度を取り入れている会社の場合には、お盆休みの前後などに、一斉に有給休暇を取得させることがあります。

そのような場合、新入社員のように、まだ有給休暇が付与されていない従業員も休ませることになります。

そうすると、有給休暇を強制的に前貸しすることになってしまいますが、前述の場合と同様に、法定通りの日数の付与の会社では、労働基準法違反になってしまう可能性があります。

強制的に休ませることになるのであれば、休業手当として、6割分の給与を支払うか、特別休暇として、欠勤ではない扱いにしてあげる必要があります。

有給休暇の前借り・前貸しによって考えられる問題点は?

有給休暇の前借りを認める場合や前貸しする場合には、法定以上の有給休暇の日数を付与している必要があります。

しかし、そのような場合でも、このような制度を取り入れることでの問題点や注意点があります。

入社から6ヶ月する前に退職してしまう

入社から6ヶ月経過する前に、有給休暇の前借りを認めた従業員が、6ヶ月経過する前に退職してしまうということも考えられます。

そのような場合には、前借りさせた有給休暇は戻ってくることはありません。

このような場合には、退職が決定した後の給与から、前借りさせた日の分の給与を差し引くことも可能ですが、トラブルになる可能性があります。

ですので、もし、このようなことが起こった場合には、特別に休暇を与えたとしてしまう方が無難でしょう。

前例を作ることで希望者に対応する必要が発生する

また、良かれと思って、そのような対応をした場合にも、前例を作ってしまうことで、今後、他の従業員にも、前借りを認める必要が出てきます。

多くの日数分前借りされたまま、退職されるケースも出てくるかもしれません。

また、前借りが多く発生すると、会社側としては、有給休暇の管理が煩雑にもなってしまいます。

有給休暇の前借り・前貸しはトラブルの原因に

有給休暇の前借りを認めるというのは、会社としては、善意でやってあげたことでも、トラブルの原因にもなりかねません。

そのため、心苦しくもあるかもしれませんが、入社して6ヶ月未満の従業員が有給を希望した場合でも、この場合だけは、通常の欠勤としておいたほうが良いでしょう。

もし、慶弔休暇の制度がある場合は、そちらを充てれば問題ありません。

また、会社が計画年休として、全労働者を休ませる場合に関しては、有給のない労働者には、特別休暇を充てるのが無難ですね。