人事異動拒否で退職は会社都合退職となる?転勤や配置転換の場合
人事異動は、会社環境や組織内部の改善を目的として行われる施策の一つです。
従業員の功績が認められて、昇格・昇進のために人事異動が行われる場合はまだ良いですが、会社で不祥事を起こした場合は降格・降任のために人事異動が行われる場合もあります。
中には、人事異動を行った場合の労働条件が合わない、勤務地が遠すぎるなどの理由から、退職を検討する人もいると思います。
しかし、人事異動を拒否するために退職をした場合、退職理由は会社都合退職になるのか、それとも、自己都合退職になるのか、疑問ですよね(^^;
ここでは、転勤や配置転換の場合など、人事異動を拒否するために退職することは会社都合退職となるのかについて、詳しく解説していきたいと思います。
目次
人事異動を拒否するために退職することは可能?
原則として、人事異動を命じられた場合には、従業員側は拒否することはできません。
人事異動は会社から出される業務命令であるため、私的な理由で拒否した場合には、業務命令違反として、懲戒の対象になることがあります。
ただし、会社からの命令に絶対に従わなければならないというものではなく、正当な理由があると認められた場合には、人事異動を拒否することができます。
人事異動を拒否する理由が正当なものだと言い切れる場合には、まずは上司に相談することをおすすめします。
上司に相談した末に、正当な理由であると判断された場合には、会社との話し合いを経て、人事異動について配慮してもらえる可能性が高くなるでしょう。
会社との話し合いを経ても配慮してもらえない場合には、人事異動を退職という形で拒否することは可能です。
しかし、人事異動は会社環境や組織内部の改善を目的として行われることが多いため、人事異動を拒否して退職した場合には、会社にも少なからず損失が出てしまいます。
また、退職を申し出ることは労働者の権利として保障されていますが、会社の就業規則に「退職日の1か月前までに退職の旨を申し出ること」と定められていることが多いのが特徴です。
退職日までに有給休暇などをうまく利用できる場合を除けば、現実的には、異動先での退職となってしまうことが多いため、注意しましょう。
人事異動を拒否するための退職は会社都合退職となる?
人事異動を拒否するための退職は、会社都合退職となる場合があります。
退職理由によっては、失業給付を最短7日で受けられるというメリットがあるため、会社都合退職にできると助かるのが本音ですよね。
どのような場合が自己都合退職となるのか、会社都合退職となるのかについて、解説していきたいと思います。
人事異動を拒否するための退職が自己都合退職となる場合
人事異動を拒否するための退職が自己都合退職となる場合は、以下の通りです。
- 私的な理由から自主退職を申し出た場合
- 正当な理由に該当するが、会社が従業員からの申し出を拒否した場合
それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
私的な理由から自主退職を申し出た場合とは?
私的な理由には、以下のようなものがあります。
- 未経験または希望していた職種ではなかった
- 担当している業務を最後までやり切りたかった
- 異動先の仕事が自分の能力と合わなかった
- 異動先が人間関係が悪いと評判のところだった
- 地元から離れたくない
- 通勤時間が長すぎる
- 新築を建てたばかりだった
- 子どもが小さいので単身赴任をしたくない
- 彼氏または彼女と結婚を控えていた
このように、人事異動を拒否するために私的な理由から自主退職を申し出た場合には、自己都合退職となります。
正当な理由に該当するが、会社が従業員からの申し出を拒否した場合とは?
正当な理由に該当すると判断できる場合には、人事異動を拒否することができます。
しかし、人事異動を拒否するために会社に相談することができるだけであって、その申し出を受け入れるかどうかは会社の判断に委ねられます。
そのため、人事異動を拒否する理由が正当なものであったとしても、会社が従業員からの申し出を拒否した場合には、人事異動を受け入れるしかなくなります。
そうなると、自主退職をするか、人事異動を受け入れるかの二択になります。
どちらを選択するかを検討した結果、人事異動を拒否するために自主退職を申し出た場合には、自己都合退職になります。
人事異動を拒否するための退職が会社都合退職となる場合
人事異動を拒否するための退職が会社都合退職となる場合は、以下の通りです。
- 会社の就業規則や雇用契約書に転勤の旨が記載されていない場合
- 人事異動を拒否したことで嫌がらせやパワハラを受けた場合
- 人事異動を拒否したことで退職勧奨や退職勧告を受けた場合
- 人事異動が不当なものであると認められる場合
それでは、それぞれについて詳しく見ていきましょう。
会社の就業規則や雇用契約書に転勤の旨が記載されていない場合とは?
人事異動を拒否したい場合には、会社の就業規則や雇用契約書に転勤の旨が記載されているかどうかを改めて確認してみましょう。
もし、会社の就業規則や雇用契約書に転勤の旨が記載されていない場合には、雇用保険法上では契約違反となります。
また、会社の就業規則や雇用契約書に転勤の旨が記載されていたとしても、契約していた地域以外の勤務地への異動を命じられた場合にも、同様の扱いになります。
会社側が契約違反をしている場合には、人事異動を拒否する正当な理由となるため、それが受け入れられなかった場合には、会社都合退職にすることが可能になります。
人事異動を拒否したことで嫌がらせやパワハラを受けた場合とは?
人事異動を拒否したことで、会社の上司などから嫌がらせやパワハラを受けて退職するように強要された場合には、会社都合退職にすることが可能になります。
また、人事異動の異議申し立てが受け入れられず、異動先で嫌がらせやパワハラを受けたことが原因で退職せざるを得なくなった場合にも、上記同様、会社都合退職にすることが可能です。
しかし、嫌がらせやパワハラが背景にある場合には、会社都合退職になるものでも、会社で自己都合退職として処理されることもあります。
退職後にも、ハローワークに退職理由の異議申し立てを行うことができますので、嫌がらせやパワハラの事実を証明するためのメモや録音などの証拠を提出するようにしましょう。
人事異動を拒否したことで退職勧奨や退職勧告を受けた場合とは?
人事異動は本来、会社環境や組織内部の改善を目的として行われる施策の一つであるため、人事異動を拒否する場合には、会社の方針に従えない人材だと判断される可能性もあります。
その場合には、会社から退職勧奨や退職勧告を受けることも少なくありません。
人事異動を拒否したことで、会社から退職勧奨や退職勧告を受けたことを理由として退職を受け入れた場合には、会社都合退職になります。
人事異動が不当なものであると認められる場合とは?
会社側の権利を濫用して、気に入らない従業員を慣れない業務のある部署などに異動させたと認められる場合には、会社都合退職にすることが可能です。
特に、正当な理由もなく、会社側の都合だけで従業員を故意に異動させて自主退職に追い込むという嫌がらせ行為が明確な場合には、極めて悪質であるといえます。
しかし、人事異動の不当性を立証させるためには、その事実を証拠として提示できるようにする必要があるので、難しいことが多いでしょう。
原則として人事異動を拒否することはできないので注意!
原則として、会社からの人事異動を拒否することはできません。
しかし、正当な理由があると認められる場合には、人事異動を拒否すること自体は可能になりますが、その申し出が通るかどうかは会社の判断になるので注意が必要です。
また、人事異動を拒否するための退職は、たいていの場合が自己都合退職になりますが、会社側に非がある場合には、会社都合退職にすることが可能です。
どのような場合に会社都合退職とすることができるのか、上記を参考にして、退職後に損がないように備えておきましょう(^^♪