雇用保険加入の条件は?20時間未満勤務なら適用されないのかどうか
雇用保険とは、労働者が職を失った際に、必要な給付を行い、労働者の生活及び雇用の安定を図るとともに再就職の援助を行うことなどを目的とした制度です
労働者にとっては非常にありがたい制度だね
しかし、正社員であれば、雇用保険に加入するのは原則ですが、パートやアルバイトで働くことになった場合には、雇用保険の加入条件はどうなるのかが気になりますよね。
- 「自分自身が雇用保険に入る必要があるのか」
- 「入ったらどうなるのか」
- 「メリットやデメリットがわからない」
といった不安や疑問がある方も多いのではないでしょうか。
パートやアルバイトで働く際に、1週間の所定労働時間が20時間未満勤務という条件の場合には、雇用保険の加入対象にはならないのでしょうか。
そこで、ここでは、パートやアルバイトで働く際に、1週間の勤務時間が20時間未満の場合には、雇用保険の加入対象になるのかどうかについて見ていきたいと思います。
目次
パート・アルバイトでも雇用保険が適用される条件とは?
パートやアルバイトでも雇用保険が適用される条件について見ていきたいと思いますが、その前に、そもそも、全ての事業所において、雇用保険というのは適用されるのでしょうか。
まずは、事業所に雇用保険が適用される条件について見ていきたいと思います。
労働者がいる場合は、雇用保険の適用事業所に?
業種や規模に関わらず、労働者を一人でも雇用する事業所は、必ず雇用保険の適用事業所になります。
そのため、事業所は雇用保険の適用を受け、適用事業所に雇用される労働者は雇用保険の被保険者となります。
つまり、事業主は、労働保険料の納付や雇用保険法の規定による各種の届出等の義務を負うこととなります。
雇用保険の被保険者の範囲は?
全ての労働者を雇用する事業所が雇用保険の適用事業所となることはわかりました。
それでは、雇用保険が適用となる労働者とはどのような場合なのでしょうか。
雇用保険が適用されるのは、雇用関係によって収入を得て生活する者となります。
つまり、パートやアルバイトであっても、雇用保険の被保険者に該当するということになります。
事業主は、雇用する従業員が、雇用保険の被保険者となる場合には、「雇用保険被保険者資格取得届」を事業所の所在地を管轄するハローワークに必ず届け出る義務が発生します。
この雇用加入の手続きである、雇用保険被保険者資格取得届の提出は、雇用される者が、被保険者となった日の属する月の翌月 10 日までに提出する必要があります。
パート・アルバイトでも雇用保険が適用される条件は?
それでは、労働者のうち、雇用保険が適用される条件について見ていきたいと思います。
パートやアルバイトであっても、労働者であれば、必ず、雇用保険が適用されるのでしょうか。
雇用保険が適用される労働者には、条件があります。
雇用保険の加入というのは、「加入したい」「加入したくない」など、本人の意志によって決まるのではなく、条件によって決まります。
パートやアルバイトの場合には、以下の条件に該当する場合には、雇用保険が適用されます。
- 31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者
- 1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること
- 学生ではないこと
それぞれについて詳しく見ていきたいと思います。
31日以上引き続き雇用されることが見込まれる者
2016年10月に法改正があり、6ヶ月以上引き続き雇用の見込みがある人が対象だったのが、31日以上に変更されました。
この条件については、1ヶ月未満の短期の仕事以外であれば、満たしていることになります。
また、これは、あくまでも見込みでも良いことになっています。
勤務開始時点では、31日以上続ける予定であれば、雇用保険の加入対象となります。
もし、予定が変わり、退職することになり、31日間以上働かないと決まった場合には、それ以降は加入条件から外れることになります。
1週間の所定労働時間が 20 時間以上であること
1週間の所定労働時間が、20時間以上あるかどうかが加入条件となります。
ただし、パートやアルバイトの場合には、シフトによって、完全に毎週20時間以上とならない場合もあります。
しかし、完全に毎週20時間以上となる必要はなく、会社との契約で、週何時間働くことになっているか、ということが条件を満たしているかどうかの判断基準となります。
また、これは通常の勤務時間であり、残業や他の人代わりの出勤などで、週20時間を超えたという場合には、加入条件には該当しません。
学生ではないこと
学生の場合は、雇用保険の加入対象にはならないことになっています。
ただし、学生であったとしても、休学中の場合、卒業見込証明書がある場合、夜間(定時制課程)の学生の場合であれば、雇用保険に加入することができます。
また、65歳以上の場合についても、以前は加入義務がありませんでしたが、2017年1月1日以降は、加入対象となりました。
勤務時間・雇用条件が変わった場合には雇用保険はどうなる?
上記の3つの条件を満たしている場合には、雇用保険の加入対象となりますが、働いている途中で、勤務時間や雇用条件が変わった場合にはどうなるのでしょうか。
これは、会社との契約が基準となりますが、一時的な場合にはどうなるのでしょうか。
一時的に20時間を越えて働く場合
繁忙期などに、一時的に20時間を超えて働くという程度であれば、雇用保険の加入対象とはなりません。
しかし、そのような状態がそのまま、数か月続いた場合や、そのまま、20時間以上の勤務に変更になる場合もあるかもしれません。
このような場合には、3ヶ月というのを一つの目安として、それ以上続くようであれば、雇用保険に加入することになります。
一時的に20時間未満で働く場合
逆にもともと20時間以上だったのが、子育てなどで時短勤務になった場合です。
こちらも上記同様で、3ヶ月以上続くのかどうかで判断するのが良いでしょう。
雇用保険加入条件の例外は?
それでは、上記の3つの条件を満たしていない場合でも、特別に雇用保険が適用される場合などがあるのでしょうか。
そのような特別措置はありません。
なぜなら、上記の条件に該当していないにも関わらず、雇用保険を適用してしまうと、離職した際に、不正に失業保険を受給することができてしまうためです。
ネットなどを調べると、「31日以上継続して雇用されていなくても、1週間当たりの労働時間が20時間未満でも」雇用保険に入れるといった情報がありますが、これは違法なので、そのようなことはできません。
パート・アルバイトでの雇用保険加入のメリットとデメリット
それでは、雇用保険加入条件を満たした場合には、雇用保険に加入することになりますが、メリットとデメリットにはどのようなものがあるのかについて見ていきたいと思います。
パート・アルバイトでの雇用保険加入のメリットは?
雇用保険加入の一番のメリットは、離職や解雇された際に、失業給付が受給できることです。
すぐに仕事が決まらない場合などには、少しでも支給されることは、安心にもなりますよね(^^)
また、あまり知られていないのですが、雇用保険には、失業給付以外にも、メリットがあります。
雇用保険のメリットはかなりたくさんありますので、ここでは、代表的なものだけ見ていきたいと思います。
再就職手当
失業給付の受給期間中に就職したことで、失業保険の給付日数が1/3以上残っているときに受け取れる手当てです。
育児休業給付
育児休業の際に、80%以上の賃金が支払われないときに受け取れる給付金です。
給付期間は出産日、8週間の産休を経て、育休が開始したときから、子供が1歳になる前日までとなります。
介護休業給付
介護休業で賃金が80%以上が支払われないときに受け取れる給付金となります。
傷病手当
失業保険の受給資格者が疾病や負傷により、求職活動をできない期間が15日以上になった場合、傷病手当が受給できます。
職業訓練
より良い仕事につくために、必要なスキルを身につける職業訓練に通うことができます。この職業訓練に通う間は「受講手当」や「通所手当(交通費)」も支給されます。
これ以外にも、雇用保険のメリットはありますが、受給にはそれぞれ条件などがありますので、自分が該当するかどうかについては、ハローワークなどで確認するのが良いでしょう。
パート・アルバイトでの雇用保険加入のデメリットは?
雇用保険に加入することは、非常にメリットが大きいように思われますが、デメリットについてはどうなのか見ていきたいと思います。
雇用保険料を負担しなければいけない
雇用保険の対象になると、毎月の給与から天引きで、雇用保険料を支払わなければいけません。
労働者の負担は3/1000(農林水産・清酒製造の事業、建設の事業は4/1000)となります。
そのため、もし、月給10万円だったら、雇用保険料の負担は月額300円です。
扶養から外れる可能性がある
週20時間以上なので、ある程度の労働日数・時間になります。
そうすると、時給にもよりますが、もし、夫や妻の扶養となっている場合には、扶養から外れてしまう可能性があります。
この場合には、扶養控除と社会保険料の問題が絡んでくるので、そちらを確認する必要があるかと思います。
雇用保険に加入しているかどうかの確認は?
事業主は、雇い入れた労働者が雇用保険の被保険者となる場合には、必ず「資格取得届」を翌月 10 日までに提出しなければいけません。
そして、その際には、「雇用保険被保険者証」と「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」が交付されます。
事業主の方々は、この通知書を被保険者本人に確実に交付しなければいけません。
労働者は、事業主によって、資格取得届の提出が行われたかどうかは、「雇用保険被保険者証」又は「雇用保険資格取得等確認通知書(被保険者通知用)」によって確認できます。
雇用保険被保険者証は、退職後に雇用保険の失業給付を受ける際や、転職の際には雇用保険番号が必要になりますので、受け取っている場合は、大切に保管してください。
しかし、雇用保険の被保険者となるはずなのに、事業主が、ハローワークに資格取得届を提出していないという場合があるかもしれません。
このようなことはあってはならないので、労働者が、自分が雇用保険加入手続が行われているかどうかをハローワークに確認する方法があります。
ハローワークで、「雇用保険被保険者資格取得届出確認照会票」用紙に必要事項を記入し、提出するという方法です。
電話での照会はトラブルのもとになるので、原則、この方法しか行えません。
雇用保険の加入はメリット・デメリットを考えて!
雇用保険の加入は、任意ではなく、条件を満たした際に、加入することになります。
雇用保険に加入していると、失業の際に、失業給付を受給できるだけでなく、さまざまなメリットを受けることができます。
デメリットとしては、雇用保険料を払う必要があることになりますが、大した金額ではありません。
それよりも、扶養内で働くことを考えている人には、そちらのデメリットのほうが大きいのではないかと考えられます。
そのあたりのことを良く考えて、ご家庭の事情に合わせて、働き方を考えるのが良いのではないかと思います。