会社の備品などを購入した際や、会社でサービスを受けた場合に領収書(領収証)をもらいますよね。
その際に、宛名を聞かれることがあると思います。
名前の漢字などのやりとりが面倒くさいので、「空けておいてください」などと答える人もいるかと思います。
逆に、何も聞かれず、宛名が空白のまま渡されるという経験をしたことのある方もいるのではないでしょうか。
また、金額の欄も空白で渡されてしまうことも、稀にあります。
このような領収書をもらった際には、経費に計上する際に、税務上、問題はないのでしょうか。
そこで、ここでは、空白で渡された領収書の宛名や金額の欄に、自分で書くのは大丈夫なのかどうかという点についてくわしく見ていきたいと思います。
目次
領収証というのは、お金を支払った側は、商品やサービスに対して、お金を支払ったということを証明するためのものです。
また、お金を受け取った側は、商品やサービスの対価として、お金を受け取ったということを証明するためのものとなります。
そして、この領収書に必要な記載事項は、消費税法第30条9項1号では、以下の5つと定められています。
このように、宛先もきちんと明記されている必要があります。
しかし、消費税法の中に、以下の条件の場合には、領収書の宛名の記載は不要であると定められています。
このような日常的に生じる、少額の取引においては、宛名は空欄でも問題ないということになります。
領収書の宛名の欄に、「上様」と記載されることがあると思います。
上記のような場合には、空欄でも問題ありませんので、「上様」の記載された領収書でも問題なく経費計上できます。
それでは、宛名や空欄の領収書を受け取った際には、経費計上する際に、どのように処理すれば良いでしょうか。
上記で述べたように、原則、領収書には、宛名の記載が必要となりますの、お金を受け取る側=サービスを提供する側に宛名を書いてもらうのが無難です。
しかし、日常的に生じる少額の取引の場合には、宛名の記載は不要とされているので、空欄のまま、経費に計上しても問題ありません。
むしろ、宛名なしで金額のみの領収書なのであれば、そもそもレシートでも税務上は、問題ありません。
ですので、日常的に生じる少額の取引の場合には、あえて、レシートではなく、領収書を発行してもらう必要はないでしょう。
もし、宛名が空欄の領収書を受け取った場合に、自分で宛名を記入するのはどうでしょうか。
領収書の発行者については、民法では、「弁済を受領した者」が発行することになっています。
つまり、お金を受け取る側が発行するということです。
(第486条)
弁済をした者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。
ですので、受け取った側が記入することは、不正行為とみなされ、罰則を受ける可能性があります。
そのため、自分で宛名を記入するのは避けたほうが良いでしょう。
領収書の受け取りに関しては、以下ように考えておくと良いでしょう。
収入印紙が必要な高額の取り引きを行った際に、領収書の宛名を金銭の受け取り側が書いてくれないなどということは、ほとんどありえないかと思います。
領収書に収入印紙が必要となる金額については、きちんと頭に入れておいた方が良いです。
では、金額が空欄で渡された場合はどうでしょうか。
これは、非常に危険です。
白紙で受け取ること自体は、犯罪でもなんでもないのですが、そこに金額を書き入れることには問題があります。
金額を空欄で発行してもらったものに、自分で金額を書き入れることは、刑法159条の私文書偽造等罪に問われ、3月以上5年以下の懲役を課される可能性があります。
また、逆に、「金額が空欄の領収書を発行するように頼まれた際」にも注意が必要となります。
これは、脱税を手助けしたとみなされ、法人税法違反幇助の罪などに問われる可能性があります。
これは、私文書偽造よりも重い刑となります。
宛名が空白でも、日常で生じる少額の取り引きの場合には、問題なく経費計上できます。
そもそも、宛名のないレシートでも問題なく処理できます。
ですので、このような場合には、会社的に問題がないのであれば、領収書ではなくレシートをもらっておいた方が良いでしょう。
必要がないのにもかかわらず、わざわざ、自分で宛名を書いてしまうと、偽造にみなされる可能性があるので、注意が必要です。
また、金額が白紙の領収書は、発行したほうも、させたほうも、罪に問われる可能性があります。
そのため、金額が白紙の領収書は、決して発行しない、発行させないように注意が必要です。