従業員が退職した際には、会社側ではいろいろな手続きがあります。
その中でも、雇用保険関係の手続きは、期限も限られていますし、労働者の次の会社への転職や失業保険の給付にも関わるので、期限内に間違いなく行う必要があります。
大きな会社や専門部署じゃない限り、退職の処理や手続きは、それほど頻繁に行うわけではないので、このような手続きの際には、毎回、書き方に悩みますよね。
退職者の雇用保険の手続きは、ハローワークで行いますが、その際には、雇用保険被保険者離職証明書というものが必要となります。
これは、離職票を発行するためのものです。
離職票は、退職者が、雇用保険の失業給付を受給する際に必要となる重要な書類です。
そこで、ここでは、雇用保険被保険者離職証明書の書き方を記入例とともに見ていきたいと思います。
基礎日数・賃金額・賞与などの項目がややこしいですが、くわしく見ていきましょう。
目次
それでは、離職票交付のための手続きについて見ていきたいと思います。
その前に、この離職票は、発行しなければいけない場合と発行しなくても構わない場合があります。
それぞれの場合について見ていきたいと思います。
会社側が必ず離職票を発行しなければいけないのは、以下の場合となります。
離職票は、退職者が雇用保険の失業給付の手続きを行う際に使用します。
そのため、退職者が失業給付を希望する場合には、離職票を発行する必要があります。
59歳以上の人が退職した場合には、次の会社に就職する際「六十歳到達時等賃金証明書」という書類をハローワークに提出する必要があります。
そのため、本人の希望にかかわらず、59歳以上の退職者には離職証明書を発行しなければなりません。
退職者が失業給付を受給しようとしている場合は、離職票が必要になりますが、次の転職先が決まっている場合は、失業給付の対象にならないため、離職証明書の発行は不要となります。
ただし、この場合でも、事情が変わって、あとあと、「やっぱり離職票を発行してください」と言われると、発行する義務があるので、離職票は発行しておいたほうが無難でしょう。
従業員が死亡した場合は、離職票を発行する必要はありません。
ただし、「雇用保険被保険者資格喪失届」は提出する必要がありますので、注意が必要です。
それでは、離職票の交付のための手続きはどのように行うのでしょうか。
従業員の退職日から2週間以内に交付しなければいけませんが、転職先が決まっていて、失業給付を受けない場合には、離職票は不要となります。
離職票の交付手続きの際には、「雇用保険被保険者資格喪失届」と「雇用保険被保険者離職証明書」を管轄のハローワークに提出します。
ハローワークから、会社へ離職票が交付されるので、会社は離職票を退職者に郵送などで送付するということになります。
もし、会社側が期日までに手続きを済ませられなかったり、退職者から請求されたにも関わらず離職票発行を拒んだりした場合は、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されるので、注意が必要です。
ハローワークの窓口だけでなく、郵送での手続きも可能です。
郵送での手続きの際には、配達記録の付く簡易書留などで送るようにしましょう。
また、ハローワークから交付される書類があるため、返信用封筒に切手を貼っておく必要もあります。
離職票を交付するためには、以下の書類が必要となります。
自己都合の退職が最も多いかと思いますので、上記は自己都合退職の際の必要書類となっております。
その他の場合には、以下の通り、必要書類が異なるので注意が必要です。
裁判所で倒産手続きの申立てを受理したことを証明する書類など
解散の議決が行われた議事録(写し)など
就業規則など
労働契約書、雇入通知書、契約更新の通知書、タイムカードなど
移籍出向の事実が分かる資料等
制度の内容が分かる資料
解雇予告通知書、退職証明書、就業規則など
希望退職の募集に応じた場合には、希望退職募集要項(写し)、離職者の応募の事実が分かる資料など
労働契約書、就業規則、賃金規定、賃金低下に関する通知書など
それでは、雇用保険被保険者離職証明書の書き方について見ていきたいと思います。
一緒に提出する、雇用保険被保険者資格喪失届は、ハローワークにあるだけでなく、ホームページからもダウンロードできます。
それでは、雇用保険被保険者離職証明書についてはどうでしょうか。
雇用保険被保険者離職証明書は、3枚複写のものを使用する必要があり、ホームページ等からダウンロードはできません。
そのため、ハローワークに行ったついでに、もしものために何枚か持ち帰り、会社にストックしておくことをオススメします。
それでは、具体的に、雇用保険被保険者離職証明書の書き方について見ていきたいと思います。
左半分から見ていきましょう。書類に記載されている番号とあわせています。
雇用保険被保険者番号を記入します。
雇用保険事業所番号を記入します。
従業員の氏名を記入します。
退職年月日を記入します。
事業所の名称・所在地・電話番号・事業主住所・氏名を記入します。
2枚目のハローワーク提出用には事業主印を押印する場所がありますので、忘れないように注意しましょう。
退職者の住所、電話番号を記入します。
離職日の翌日から1ヶ月ごとにさかのぼって記入していきます。
雇用保険の受給資格の有無の判断材料になるため、賃金の支払基礎日数が11日以上ある月を12ヶ月分(最大2年間)記入します。
特定受給資格者や特定理由離職者、65歳以上の離職者の場合は、賃金の支払基礎日数が11日以上ある月を6ヶ月分記入します。
⑧で記入した賃金支払対象期間のうち、賃金の支払い対象となった日数を記入します。
月給制の場合は、賃金支払対象期間の暦日を、日給制、時給制の場合は、出勤日数を記入します。
欠勤で休んだ日があった場合などは、月給制、日給月給制、日給制、時給制のいずれを採用していたかで記載が変わります。
月給制の場合は、休んだ日も含めますので、そのまま暦日数を記載します。
日給制、時給制の場合は出勤した日数を記入します。
日給月給制のように公休日を除いた期間を給与の支給対象としている場合は、その期間の日数を記入します。
いずれの給与体系の場合でも、有給休暇を取得した日も含みます。
欠勤日数がある場合は、所定労働日数から欠勤控除を引いた日数を記入します。
被保険者期間算定対象期間に対応する給与の締め期間を記入します。
賃金締切日の翌日から次の賃金締切日までとなる、賃金支払対象期間を記入します。
失業給付の計算のために、離職日を含む月以外に最低でも6ヶ月記入する必要があります。
締め日の都合で給与計算が終わっていない場合は賃金額の欄を空欄にし、備考欄に「未計算」と記入します。
⑩の期間における賃金の支払基礎日数を記入します。
有給休暇の取得日、休業手当の対象日も含めます。
⑨の賃金支払基礎日数と同様に、月給制は期間中の全日数、時給制や日給制は実働日数のみ書き入れます。
月給者の賃金はA欄に、日給者や時給者はB欄に記入します。
賃金額は通勤手当などの全ての手当を含み、社会保険料や税金の控除前の総支給額を記入します。
通勤手当をまとめて支払っている場合は、ひと月あたりを計算し、それぞれの月に計上します。
未払い賃金がある場合にはその旨を記載します。
毎月支払われる賃金以外で3ヶ月以内の期間ごとに支払われているものがある場合、支払日や賃金名称、支給額等を記載します。
離職理由の欄には、倒産や定年、労働契約期間満了、労働者の判断など6種類19パターンの離職理由が記されています。
この中から該当するものを1つ選んで○を付けます。
そのうえで「具体的事情記載欄」に具体的な内容を記入します。
離職理由によって、受給資格や受給日数が変わりますので、退職者とのトラブルにならないように正確に記入してください。
また、理由によって、添付書類の内容も変わってきますので、注意が必要です。
以上で、正しく提出できる書類が完成します。
なお、ハローワークで受付の際に、多少の修正は窓口で行ってもらえます。
そのために、捨て印を押しておく必要があります。
退職手続きを行うのは、あまり気持ちの良いものではありませんね(;^_^A
退職理由にもよりますが、会社への不満があったのであれば、その内容をしっかりと反省し、今後に活かすのも重要なことです。
採用や雇用には、莫大な労力と費用がかかりますよね。
残念なことに、退職してしまうということになった場合にも、最後に退職者に迷惑をかけたり、悪い印象を与えないためにも、退職の処理は確実に正確に行いましょう。
特に、離職票の発行というのは、退職者の失業給付の受給という、お金に関わる手続きとなります。