社会保険の適用事業所において、新たに従業員を雇い入れた場合、その従業員が社会保険の加入対象者であれば、社会保険の資格取得の手続きを行う必要があります。
国民健康保険は、扶養の概念がないのですが、社会保険の健康保険は、被保険者の保険料負担で、被扶養者も健康保険に加入することになります。
そのため、従業員に、扶養家族がいる場合には、扶養家族も、健康保険の被扶養者の認定手続きが必要となります。
新たに雇い入れた従業員だけでなく、勤務中の従業員が結婚や出産によって、扶養家族が増えた場合にも、同様の手続きが必要となります。
このときに、「健康保険被扶養者異動届」というものを記入し、提出することなります。
そこで、ここでは、この健康保険被扶養者異動届の書き方や記入例について見ていきたいと思います。
目次
社会保険に加入している従業員に、家族が増えた場合に、その家族が被扶養者に該当する可能性があります。
例えば、結婚して妻が専業主婦になった、子どもが産まれた、などといった場合です。
その他にも、共働きだったが妻が退職した、仕事を退職した親の生活費を負担することになった場合なども該当する可能性があります。
このような場合において、被扶養者となるには、社会保険上の扶養家族の条件を満たす必要があります。
健康保険、つまり、社会保険上の扶養家族の範囲は、健康保険法で以下のように規定されています。
上記のいずれかの条件に該当すると扶養家族となりますが、75歳以上で加入する後期高齢者医療制度の被保険者となる人は扶養家族とはなりません。
収入の要件は以下となります。
年間収入130万円未満(60歳以上又は障害者の場合は、年間収入※180万円未満)かつ
しかし、40歳から64歳の家族を被扶養者とした場合には、該当する被扶養者の介護保険料が別途必要となります。
健康保険被扶養者異動届を提出する際には、被扶養者として認められるために添付する必要のある書類があります。
それぞれについて見ていきたいと思います。
上記の添付書類は、提出日から90日以内に発行されたものとなり、住民票の写しは、被保険者が世帯主で、扶養認定を受ける人と同居している場合のみ認められます。
ただし、上記の添付書類は、被保険者と扶養認定を受ける人のマイナンバーが記入されており、扶養認定を受ける人の続柄を事業主が相違ないことを確認した旨を記入すれば、省略することが可能です。
健康保険の扶養となるためには、被扶養者の年間収入が130万円未満であることが条件の1つとなります。
このことを証明するためには、被扶養者の「課税証明書」等が必要となります。
ただし、16歳未満の場合や、対象者が所得税法上の扶養親族に該当することについて、事業主の証明があれば、課税証明書等の添付書類は必要ありません。
被扶養者が別居している場合には、被扶養者の生活費を仕送りしていることが確認できる書類が必要となります。
仕送り額がわかる預金通帳等のコピー、現金書留のコピーがその証明書類となります。
ただし、対象者が16歳未満もしくは16歳以上の学生である場合は、仕送りに関する証明書類は不要となります。
健康保険被扶養者異動届は、被扶養者の追加等が発生してから、5日以内に提出します。
提出先は、管轄の年金事務所となります。
郵送、窓口持参、電子申請のいずれかでの提出となります。
それでは、健康保険被扶養者移動届の書き方について見ていきたいと思います。
事業主記入欄には、事業所整理記号・事業所所在地・事業所名称・事業主氏名・電話番号を記入します。
また、被扶養者の収入要件を事業主が確認した場合には「確認」を〇で囲みます。
これにより、課税証明書等の所得証明書類の提出を省略することができます。
被保険者について記入します。それぞれの記入内容について見ていきたいと思います。
社会保険の被保険者に割り振られている番号です。
健康保険証の「番号」の箇所に書かれている数字が被保険者番号です。
被保険者の氏名を記入します。
被保険者の生年月日を記入します。
被保険者の性別を選択します。
マイナンバーをします。
被保険者が社会保険の資格を取得した日を記入します。
今後1年間の見込み年収を記入します。
⑤にマイナンバーを記入した場合は、⑧の住所の記入を省略できます。
国民年金保険の第3号被保険者関係届も兼ねており、配偶者を扶養に入れる場合に記入します。
配偶者の氏名を記入します。
日付は、被扶養者(異動)届を事業主へ提出した日を記入します。
下部の「※第3号被保険者関係届の提出は配偶者(第2号被保険者)に委任します」にチェックを入れます。
配偶者の生年月日を記入します。
配偶者の性別を選択します。
配偶者のマイナンバーを記入します。
配偶者が外国籍の場合のみ記入します。
配偶者が外国籍の場合のみ記入します。
同居か別居かを選択し、住所を記入します。
配偶者の電話番号を記入します。
配偶者が被扶養者になる場合は、左側の「該当」を〇で囲みます。
日付は、配偶者が被扶養者になった日付を記入します。
被保険者の資格取得と同時に提出する場合は、「1.配偶者の就職」に該当します。
配偶者の職業を選択します。
配偶者の今後1年間の見込み年収額を記入します。
収入には非課税対象のもの(障害・遺族年金、失業給付金等)も含みます。
配偶者が被扶養者でなくなる場合は、左側の「非該当」を〇で囲みます。
変更の場合は、「変更」を〇で囲みます。
日付は、配偶者が被扶養者でなくなった日付を記入します。
配偶者が被扶養者でなくなった理由を選択します。
「※続柄確認済み」の箇所は、事業主が被保険者と被扶養者となる配偶者との続柄を確認した場合、ここにチェックを入れることで添付書類を省略できます。
海外居住者又は海外から国内に転入した場合のみ、記入します。
配偶者を扶養から外す場合など配偶者が被扶養者とならない場合に配偶者の年収を記入します。
配偶者以外の家族(親族)を扶養に入れる場合にこのC欄を使用します。
基本的には記入内容は同じです。
別居で仕送りをしている場合は、1回あたりの仕送り額を備考欄に記入します。
また、最下部の「扶養に関する申立書」欄に1年間の仕送りの回数を記入し、署名捺印します。
対象者が16歳未満または16歳以上の学生の場合は、添付書類を省略することができます。
国民健康保険では、扶養の概念がなく、配偶者や子供が増えても、それぞれが国民健康保険に加入する必要があります。
それに対して、社会保険の健康保険では、被保険者一人が加入すれば、配偶者や扶養家族などは、1人分の社会保険料で、加入することが可能です。
これは、毎月、高い社会保険料を負担していることにおいて、非常にメリットとなりますよね。
そのため、このメリットを確実に受けられるようにするために、会社側では、被扶養者のいる被保険者の手続きを確実に行えるように、内容を把握しておく必要があります。